「日雇派遣の原則禁止」で労働者の地位は安定したか?否
この記事から続いています。
現役派遣労働者、もしくはかつての経験者で、短期・単発派遣も経験したことのある人は皆、口を揃えて
「改正人材派遣法は改悪だ」
「政治家の考えは本当に庶民とは乖離している」
と言います。
改正人材派遣法で「日雇派遣の原則禁止」が打ち出された理由を、厚生労働省はこう説明しています。
日雇派遣については、必要な雇用管理がなされず、派遣労働者の保護に欠けることから、原則禁止とする。
派遣会社と派遣スタッフが雇用契約を結ぶ際は、原則「31日以上の雇用期間」の契約を義務付けることとする。
政治家お得意の「机上の空論(理想論)」では、
「これで派遣労働者は長期雇用が約束され、収入が安定し、大喜びするはず!」
(どうだ、考え付いたぼくちんは偉いでしょう?)なんですね。
しかし実際は、ごく短期だけ人手が欲しい(しかし自社で人を集めている時間がない)企業や、諸事情によりスポット的に働きたい、そういう働き方しかできない求職者は減りませんでした。
結局どうなったかというと、アウトソーシング会社やスキマバイト紹介会社が急増。
いわゆる「単発バイトさん」や「タイミーさん」が一般化し、労働者がそちらに流れてさらに不安定になっただけでした。
アウトソーシング会社
いわゆる業務の外部委託を受託する会社です。
必要な労働力はその都度「自社直接雇用のアルバイト」という形で求人、雇用します。
人材派遣の形を取らないので、人材派遣法の縛りを受けません。
1日単位で「自社直接雇用アルバイト」名目で人を集めることが可能です。
日本では「アルバイトの時給は派遣の時給より低いのが当たり前」と認識されているため、労働者に払う時給は派遣より安くて済みます。
企業にとっては
「派遣より安く利用できるし、労働者に対する指揮命令も含めて丸投げできるから、楽」
ですが、労働者のもらえる賃金は一般的に派遣の時より下がります。
「労働者を保護するために」とぶち上げて、派遣ではアレも禁止コレも禁止としたことで、労働者は派遣と何ら変わらない内容の仕事をアウトソーシング会社のアルバイトという形でやることになり、同じ内容の仕事をやっても収入は逆に低下したのです。
「スキマバイト」紹介事業者
求人企業と求職者をマッチングアプリでマッチングさせ、「後は直接契約でどうぞ」として紹介手数料だけを稼ぎます。
先日の記事で指摘した、生成AIの解説する「単発派遣」(内容は大間違い)は、実はこのスキマバイトのマッチングシステムの解説でした。
ここ数年急伸しているスキマバイトですがトラブルの報告もとても多いのが現状です。
例えば、知らないうちに「個人事業主」として契約させられていたため残業代が出なかった、といった事例が報告されています。
例)
「3時間で4千円の簡単な仕事」と言われたが、実際は用意されていた業務量が多く、必死にこなしても5時間かかった。
残業代について尋ねると「個人事業主は残業代を請求できない」と言われ、初めて「雇用契約書」ではなく「業務委託契約書」が作成され、自分が同意もないまま「個人事業主」にされていると知った。
個人事業主が企業と結ぶのは雇用契約ではなくと業務委託契約となるため、労働基準法が適用されません。
支払われる金銭も給与ではなく業務委託契約の報酬(定額)とみなされるため、残業手当の観念もありません。
アウトソーシング会社の直雇用アルバイトならば、例え時給を派遣より下げられてもまだ労働基準法が適用され、既定の残業代を請求する権利もあります。
スキマバイトでブラック企業とマッチングされてしまうと、残業代すらもらえなくなります。
「3時間で4千円(時給換算1,333円)」のはずの仕事が実際は5時間かかるものだった場合、時給換算は800円。
最低賃金を下回ります。
現時点で最低賃金が日本で最も低い秋田県の951円よりも少ない。
2024年10月1日改正の最低賃金は以下の通り。
画像は時事通信よりお借りしました。
しかし最低賃金とは労働基準法の適用を受ける場合にはじめて有効となります。
労働基準法が適用されない業務委託契約は、最低賃金の適用外です。
アウトソーシング会社のアルバイトと同じことをやっても、収入はまた更に低下しました。
というわけで、国が「単発派遣の禁止」などと要らんことをやったせいで、労働者の受け取る賃金はどんどん減っています。
そして、ヤケになった貧困若年層が安易に手を出して社会問題となっている「闇バイト」につながっていきます。
国が安易な思い付きで派遣をチョイと締め付けて自己満足した結果、バタフライエフェクトが起きていると感じています。
<バタフライエフェクト>
「ブラジルで飛ぶ小さな蝶のはばたきが起こした空気の渦が、巡り巡ってTふぃきゅうの裏側でトルネードを引き起こす」
些細なきっかけから因果関係が連鎖し多大な変化と影響を起こすという例え。
蝶恐怖症なもので、ハチの画像にて代えさせていただきます。
カラパイアよりお借りしました。
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