飛鳥尽きて良弓蔵る 狡兎死して走狗煮らる
<鳥尽弓蔵、狡兎走狗>
「鳥尽きて弓おさまる、狡兎死して走狗煮らる」
鳥を狩り尽くせばどんな良い弓も蔵にしまわれ日の目を見ることはなくなる。
うさぎがいなくなれば猟犬は用済みとして煮て食われてしまう。
やることがなくなると、どんなに優秀な(と自分で思っていた)者でも無用扱いされることの例え。
これから書くことは私が派遣(事務系)をやっていた頃の実話です。
派遣を始めたばかりの頃なので少々昔の話です。
それは3日間だけの単発の仕事でした。
呼ばれた派遣は女性3名。
派遣先はお堅い企業。
職種は事務系軽作業。
初日に担当の社員さんが会議室で書類の山を前にこんなことを言いました。
社員「やっていただくのはこの書類の分類です」
- 専門用語一覧表を用意しています。見ながら分類してください。
- 専門用語を熟知している人なら2日で分類できる量です。
- もちろん皆さんは初めてでしょうから3日用意しています。
- なるべくミスのないように仕分けてください。
- 書類は三等分の山にしていますので、一人一山担当してください。
- 社員はこの部屋に常駐できません。不明点はできるだけ別途用意したマニュアルを見て解決してください。
「ではよろしく」と社員さんは出ていきました。
専門用語一覧を見ると、そんなに難しくない言葉が並んでいます。
これなら私でも2日でできるんじゃない?という量です。
しかし2日で終えたところで、3日目は遊んで3日分のお給料がもらえるものでもありません。
今は知りませんが当時はそうでした。
倉庫整理(力仕事:一応契約書の「軽作業」の範囲内)など、無理やり見つけて来られた仕事を代わりにやることになります。
ならば。
私「ここは正確性を重視して無理をせず、2日半を目安に終わらせて最後の半日で再点検。このペースでやりませんか?」
と私は他の二人に提案しました。
A子「賛成です。早さより正確性重視と言われたので、それでいいと思います」
B子「えっ、嫌ですそんなずるいこと」
私・A子「えっ?ずるい??」
B子「優秀な人なら2日でできるんであれば、私は絶対に2日で終わらせます。私はスキルアップしたくて仕事してるんで!」
私 (優秀な人なら、って誰が言った?いつ言った??)
A子 (ほっときましょう)
作業が始まるとB子さんはわき目もふらず鬼のようなペースで仕分けを始めました。
1日目の終わりにはB子さんは自分に割り当てられた量のきっちり半分を終えていました。
私とAさんは計画通りのペースで5分の2ほど終えていました。
2日目の終わりにはB子さんは自分に割り当てられた量を全て終えていました。
私とAさんは計画通りのペースで5分の4ほど終えていました。
社員「おお、いい感じですねえ」
社員さんもニコニコです。
社員「これなら最後にもう一度再点検しても明日で終わりそうですね」
B子「私はチェックまで終わってます」
社員「そうですか。では明日は2人を手伝って、最後に3人でもう一度再点検を…」
B子「私は、自分の分は全て(協調)もう終わってます(遅い人の手伝いなんてしたくないオーラ全開)」
社員「じゃあB子さんは明日は何をされたいんですか?他にやっていただくような仕事は、ないんですが…(困惑)」
B子「では私は明日は休みます。ちょうど用事もあるし…大丈夫です!」
社員「はあ…??」
自分の方から3日目は休むと申し出たため(ここポイント)、B子さんの3日目の日給はこれで無しです。
明けて3日目の朝、派遣の営業が来て何か謝ってるのを偶然視界の端で見ました。
B子さん抜きの3日目はつつがなく終わり、退社時間となりました。
A子「ここだけの話ですが、私も本気出せば2日でチェックまで終わらせること、ギリ可能でした」
私「はっはっは。私もですよ。でも兎を狩り尽くしたら犬はお払い箱ですから」
A子「あ、それ、ことわざですよね」
私「もしこれが出来高制で、2日かかっても3日かかってもお給料が同じとかだったら、意地でも2日で終わらせますけどね」
A子「そんなの基本です」
ここで
「給料に関係なく、仕事は常に全力投球で最短時間で終わらせるものだ!あさましい!不愉快だ!これだから時給制はダメなんだ!」
と憤られる方には、すいません。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。