HSS型HSP🌏Millieの脳内世界

いらっしゃいませ。お好きな記事へどうぞ。

   

It is getting hotter.
Be careful not to eat too much cold food.
This year's ducklings will hatch soon.
How many ducklings will we see ?

文学>詩>R・ブラウニング>春の朝:すべて世はこともなし

Pippa's Song    
Robert Browning 


The year's at the spring,
The day's at the morn;
Morning's at seven;
The hillside's dew pearled;
The lark's on the wing;
The snail's on the thorn;
God's in His heaven,
All's right with the world !


「春の朝(あした)」  
ロバート・ブラウニング(上田敏・訳)


時は春、
日は朝(あした)、
朝(あした)は七時(ななとき)、
片岡(かたおか)に露みちて(満ちて)、
揚雲雀(あげひばり)なのりいで(名乗り出で)、
蝸牛(かたつむり)枝に這い、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。


「ふたりっ子カルガモ」の記事を書いてる最中に、すごく久しぶりにふと頭に浮かんできた、この詩。



   


『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空組織・特務機関NERV(ネルフ)の紋章の下にも、この詩の最後の2行(God's in His heaven,All's right with the world!)が刻まれているそうですが・・・。


読めるように拡大して貼ってみました。あっ、ありますね!確かにこの詩が書かれています。


芋づる式に、この詩にまつわる一連の出来事まで鮮やかに思い出してしまったので、忘備録として書いておきます。


中学一年の時のことです。


ある日、現国の宿題に「一番好きな詩を書いてきて発表する(暗唱できればなおよし)」
というのが出ました。


私はちょうど図書館の本で上のブラウニングの詩を読んだ直後でした。特に上田敏の訳の方の独特のリズムが好きだなと思っていたので、日本語訳の方を覚えて行きました。


その日私は最初に当てられて、「時は春・・・」をそらんじました。
短いので一字も間違わず暗唱できました。


しかし現国の先生(30代の男性でした)はなんとなく渋い顔です。
「なんだよう。外国の詩かよう・・・」
と彼は言いました。


え?は?・・・あ、まさか?


「現国の宿題だぞ。げ・ん・こ・く。日本の詩を書いてこないか、ふつう?」


やっぱりそうきたか。


もちろん私もそこは考えました。考えたうえで、


現国の宿題だ → みんな日本の詩人の作品を書いてくるだろう
→ 外国語の詩の日本語訳にしよう


という、「裏の裏の裏を考えたあげく、最後にもう一回裏返す」というHSP独自の深堀り思考で選んだんです。


「一番好きな詩としか言われませんでしたし、私が好きなのは原語ではなく、上田敏の日本語訳の方ですから」


と私は答えました。


「うん、まあ、日本人の作った詩で一番、とは確かに言わなかったさ」
先生はまだぶつぶつ言います。


「しかしな、日本の詩には独特の情緒ってものがあるだろう?例えば
『太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降り積む。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降り積む』
とかさ。エンドウ(仮名)は、この辺の詩を書いてくると思ったんだがな~」


その先生がいかにも好きそうな、この三好達治の「雪」は、クラスメイトの少なくとも2~3人は書いてくるんじゃないかと思って、避けたんですよね。


「では、代わりに石川啄木の短歌で一番好きなものを暗唱します」
と私は言いました。


「お、啄木、イイネ!」
と先生。


先生としては、一番有名どころの「はたらけどはたらけど」とか「ふるさとの訛りなつかし停車場の」あたりだと思ったことでしょう。
しかし、私が本心から一番大好きな啄木は、当時も今もこれ一択です。


「一度でも 我に頭を下げさせし 人みな死ねと 祈りてしこと」


「おまっ・・・!!」
先生は、しばし絶句して目をしばしばさせながら私を凝視したのち、
「変人だ。エンドウ(仮名)は変人だ!」
と、ため息とともに言い切ったのでした。


一応言っときますと、この「一度でも」は、後に林修先生も「啄木の歌で一番好きなのはこれ」と言った名句ですよ!?


キレイなもの(こと)をキレイな言葉でキレイに歌うのが王道とされた(特に明治当時の)短歌界で、おのれの赤裸々な負の心情(弱さ)を、ごまかさずにここまでさらして、さらに本に発表するって、すごくないですか?


それに、これを読んで
「私、こんなこと生まれてから一度も思ったことすらない!啄木サイテー!」
と思う人より


「口には出さないけど、自分も一度くらい思ったことある。弱虫と思われたり、批判されるのが怖くて言えないだけで。・・・言えちゃう啄木、かわいいなあ」
って思う人が多いからこそ、彼の本は今も売れてるんじゃないでしょうか?


しかし、私はもうそれは言いませんでした。
(この先生、めんどくさい)と思ったから。


その後しばらくは、悪ガキ系男子たちから「おい、変人」「おはよう、変人」と呼ばれたり、2、3度は黒板に「変人」と書かれたというオマケも、苦い思春期の思い出の1ページです。


すべて世はこともなし。(万能の締め文句ですね、これ)