ノーベル文学賞受賞作品「雪国」(川端康成)の英訳バージョン
この記事で例に使った川端康成の「雪国」。
日本人が初めてノーベル文学賞を受賞した、記念すべき作品です。
ノーベル賞は年に一度決定・授与され、第1回は1901(明治34)年。
川端康成の「雪国」が受賞したのは1968(昭和43)年でした。
※「雪国」が日本で発表されたのは1935(昭和10)年です。
「雪国」の日本人初受賞から今年で56年が経ちます。
川端康成以降現在までにノーベル文学賞を受賞した日本人は、1994(平成6)年の大江健三郎(昨年死去)ただひとり。
つまり今年で123年目となるノーベル賞の歴史の中で、日本人受賞者はまだ2人。
ノーベル各賞の日本人受賞者数の累計数は以下の通りです。
物理学賞 : 12人
化学賞 : 8人
生理学・医学賞 : 5人
文学賞 : 2人
平和賞 : 1人
経済学賞 : 0人
日本人にとって文学賞が理系賞(物理学賞/化学賞 /生理学・医学賞 )に比べハードルが高い理由は、英語訳の難しさだと言われています。
ノーベル文学賞の選考を行うのは、スウェーデン・アカデミー(スウェーデン国立学士院)。
ノーベル文学賞選考委員会を兼ねるスウェーデン・アカデミーの定員は18人。
原則、全員スウェーデン人です。
なので論文にせよ文学作品にせよ、原語で読まれることは絶対にありません。
全て英語翻訳版で読まれます。
そのため、まず読んでもらうための鍵は英語翻訳です。
そして、理系論文に比べると日本文学は翻訳が難しい。
なにせ「伊豆の踊子」が「The Izu Dancer」になってしまう世界です。
どんなヒップホップ系ダンザーだよ、ミス・イズー!
「伊豆の踊子」とは主人公である「私」が旅先の伊豆で知り合った旅芸人一座の一員で、まだ14歳の少女です。
名前は薫(かをる)。
旅芸人は英語で barnstormer。
「 Kaoru the barnstormer girl」(旅芸人の少女、薫)
「I've crush on Kaoru the barnstormer girl」(旅芸人の少女・薫と恋に落ちた)
じゃダメなのかなあと思ったものです。
ええ、ええ、説明的ですよ。
でも「The Izu Dancer」よりは…ねえ…。
翻訳者サイデンステッカー
川端康成の「雪国」が受賞できたのは、ドイツ系アメリカ人翻訳者エドワード・ジョージ・サイデンステッカー Edward George Seidensticker(1921~2007年)氏の功績が大きいと言われています。
なにせ川端先生自身がそう言って、ノーベル文学賞の賞金をサイデンステッカー氏と折半(はんぶんこ)しているほどです(実話)。
「雪国」は何人もの英訳者が翻訳していて、何通りかの訳版が存在します。
「雪国」
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
Snow Country
The train came out of the long tunnel into the snow country.The bottom of the night turned white.
再直訳:汽車は長いトンネルを抜け雪国に出た。夜の底が白色に変化した。
Snow Country
After passing through a long tunnel on the border, it was a snowy country. The bottom of the night turned white.”
再直訳:国境の長いトンネルを走り抜けた先は雪国だった。夜の底が白色に変化した。
Snow Country
The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky.
再直訳:汽車は長いトンネルを抜け雪国に出た。大地が夜空の下に白く横たわっていた。
サイデンステッカー訳版は一番下(三番目)だそうです。
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