離婚率と労働時間を根拠に「昔はよかった」に反証する・前編(離婚率編)
「昔はよかった」という言葉が好きではありません。
なぜならそこに科学的根拠や説得力のある数字がなく、あるのはそれを言う人の個人的なノスタルジーと願望だけ、というケースが多いと感じるからです。
例えば☟
「今の若い人は簡単に離婚する。こらえ性がない。昔の日本人はもっと忍耐強かった、偉かった」
嘘です。
言ってるご本人には嘘の自覚はないのでしょうから、錯誤と優しく言い換えてもいいです。
しかしこう言いたがる人は説教口調で上からくることが多いから、嘘!と言い返したくなるんですけど。
総務省統計局によると、2022年度の国別離婚率(人口1,000人当り)トップはベラルーシの3.70(2022年度)だそうです。
アメリカは2.30、日本は1.50。
2017年度にはロシアが4.70というハイスコアを叩き出していて、近年の統計資料の中では最大値のようです。
対して1956( 昭和31年)の日本の離婚率は 0.80(これは内閣府発表の数字)です。
昔はよかったさん「ほーらみろ、それみろ、今の半分じゃないか」
高笑いが聞こえてきそうですが、待ってください。
1883(明治16)年の日本の離婚率は3.39です。
今の倍以上です。
世界一のベラルーシに迫る勢いです。
そして江戸時代はというと、全国規模の統計記録はなく藩ごとの記録となりますが、多い所では4.5前後あったそうです。
ロシアの記録に肉迫です。
今の約3倍、昭和31年の5.5倍。
江戸時代はなぜそこまで離婚率が高かったかというと、女性の再婚が非常に容易だったからという説が一般的です。
江戸時代に離婚を成立させるためには、夫が離縁状を書いて妻に渡さなければいけませんでした。
妻が離婚を切り出した場合も離縁状は夫に書かせます。
☟読めーーん!
離縁状画像はユーキャンの古文書入門通信講座より。
(あるんですよ本当に)
それには必ず「元妻の再婚を許可する」という一文を入れる決まりがありました。
(上の古文書にも3行目から4行目にかけてそれが書かれているらしい。読めんけど)
結婚する時にあらかじめ「先渡し離縁状」を要求する女性もいました。
先に確保しておけば、夫が素行不良を起こした時には問答無用でさっさと逃げれば離婚成立。
再婚にも支障がないからです。
なんでも土佐藩には「一人7回以上の婚姻を禁ず」つまり最大再再再再再再婚までしか許可しないよ、という内規があったそうです。
ということは、上限を設けておかないとそれ以上の回数をこなす猛者が男女共にいた、ということですよね。
それが明治も半ば頃から急に「(特に女性の)離婚を恥または悪と考えて非難する」「(特に女性離婚者を)出戻り呼ばわりして見下す・貶める」風潮が蔓延し、離婚率が激減。
昭和30年代頃に離婚率の底を迎えます。
「昔の日本人は離婚なんてしなかった」さんの言う昔とは、この日本の離婚率が異様に落ち込んだ特異な数十年間のことです。
ずいぶんピンポイントな昔です。
「昔の日本人は勤勉だったのに、今時の若い子はプライベート優先でわずかな残業すら嫌がる。勤労意欲が希薄で嘆かわしい云々かんぬん」
というのもそうです。
ちょっと長くなってきたので、ここで後編に続きます。
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