動物の新生児には二種類ある・それは早成性と晩成性
早成性と晩成性
毛(羽毛)が生え揃い、目が開き耳も聞こえ、生まれたその日から立てる歩ける。
何なら走れる。
水鳥なら泳げる。
さすがにまだ飛べはしませんが。
親と同じ食べ物を、親に食べさせてもらわずとも自力で食べれる。
これが早成性。
母親の胎内で、もしくは卵の中で限界まで成長させてから産みだされるため、生存率向上と親の育児の負担の削減につながります。
哺乳類の場合は非捕食者(草食動物)に多くみられます。
生まれたてのキリン画像は毎日新聞、孵化したてのダチョウ画像はダチョウ王国石岡ファームお借りしました。
※ダチョウは、身体は巨大ですが完全草食です。
欠点は母親の胎内で胎児を限界まで成長させるため、多産ができないこと。
牛も馬もキリンもゾウも、一度の出産で一頭しか産めません。
卵生(胎内では育てない)の早成性であるダチョウの場合は、15個~25個の卵を産卵します。
ただし一度に20個前後の卵はメスのお腹に入りきらないので、一個ずつ何日もかけて産み、数がまとまったところで抱卵します。
一度に10~15個産卵するカルガモも同じです。
早く産卵された卵は、親が抱卵して温め始めるまでは成長を開始しません。
産卵された日が10日~2週間違う兄弟卵も、抱卵開始と同時に成長を開始するため、同じタイミングで孵化します。
もうひとつが晩成性。
毛(羽毛)はなく丸裸で生まれ、目は閉じていて耳もよく聞こえない。
親に対して庇護を要求するための発声は辛うじてできるものの、ほぼ無力。
哺乳類の場合は親と同じものは食べれないため、哺乳(授乳)が必要(だから哺乳類)。
鳥類の場合は親と同じものは食べれるけれど自力で獲れないため、親が食物を調達して個別に強制給餌をする必要がある。
未熟児の状態で産みだされるため、哺乳類にとっては妊娠中の母体への負担軽減になります。
その分育児の手間がたいへんですが。
哺乳類の場合は捕食者(肉食動物)に多くみられます。
生まれたてのネコ画像はユニ・チャームペットよりお借りしました。
哺乳類の場合、晩成性は捕食者(肉食動物)に多くみられます。
鳥類の場合、最大派閥のスズメ目(もく)はほぼ晩成性。
胎内で育てるわけではない鳥類にまで晩成性が多い理由は、まだはっきりとは判明していません。
鳥界では少数派閥ながら、家禽化されているため人間には大変お馴染みのキジカモ類は早成性。
早成性の鳥と晩成性の鳥
早成性の鳥の代表格はキジカモ類ですが、他にダチョウやツル、チドリも早成性です。
その他の鳥はほぼ晩成性です。
それぞれの特徴をまとめると下のようになります。
早成性の鳥
- 地上に簡易的な巣を作り産卵する。
- だから捕食者に狙われやすい。
- だからヒナであろうと自分の脚で逃げる必要がある。
- 食性は草食が多い。
- 育児に比較的手がかからないため、オスは営巣・抱卵・育雛に非協力的。
晩生性の鳥
- 樹上や地中などに安全な巣を作り産卵する。
- 地上よりは多少捕食者に狙われにくい。
- 食性は、ヒナの間は昆虫や穀物など比較的高栄養食を摂るものが多い。
- だから親が食物を調達し、給餌する必要がある。
- 育児に手がかかるため、オスが営巣・抱卵・育雛に協力する。
半晩生性の鳥
ペンギンは、半晩生性と呼ばれます。
比較的過酷な環境に棲息しているため、孵化したてのヒナは毛も生え揃い目も開き、歩けます。
姿だけ見ると晩生性です。
しかし泳ぎは無理。
ペンギンは潜水して海水魚を捕食する食性のため、餌は親が捕って来て給餌する必要があります。
この点は早成性と同じです。
ゆえに半晩生性と呼ばれます。
- 海岸沿いの岩場に簡易的な巣を作るか、全く巣を作らず産卵する。
- だから捕食者に狙われやすい。
- だからヒナであろうと自分の脚で逃げる必要がある。
- 食性は肉食(海水魚)。親が食物を調達し、給餌する必要がある。
- 育児に手がかかるため、オスが営巣(しない種もあり)・抱卵・育雛に協力する。
哺乳類と鳥類の違い
晩生成の哺乳類の場合、未熟児の子の育児がどんなに大変でもオスは全く育児に関与せず、母親のワンオペという種がざらにいます。
ライオンを除くネコ科は、オスは育児に参画しません。
ネコと共通祖先を持つイヌ科は、オスも育児に参画します。
一方鳥類では、未熟児の子をメスだけに押し付けてオスが知らん顔をする種はほぼいません。
中にはオスが独力で立派な巣を作り上げ、それをメスにアピールにするのが求愛行動になっている種類もいます。
逆に東洋人が「仲睦まじい夫婦」の代名詞にしているオシドリは、キジカモ類(カモ科)です。
だから早成性です。
だから育児はメスのワンオペです。
メスが産卵したと見るやいなや、次のメスを探しに行くドンファンなオシドリのオスもざらにいます。
カモ科の繁殖期は夏場の数カ月続くので、うまくいけば次の彼女にも産卵させることができるからです。
中には巣のそばでしばらく見張り(自宅警備員)を買って出る姿勢を見せるオスもいますが、それ以上のことはほとんどやりません。
そして自宅警備員系のオスも、ヒナがある程度育ったとみるや他のメスを探しに行くことが多いのです。
この辺りは他の晩生性の鳥と全く変わりません。
早成性の鳥の多く、およびペンギン目は、一度繁殖ペアを形成すると片方が死亡するまで同じペアで繁殖を続ける傾向が強くあります。
なのでツバメやスズメやペンギンの方が、オシドリよりもはるかに仲良し夫婦と言えます。
ちなみに下がオシドリのヒナです。
あなたはカルガモのヒナと見分けがつきますか?
私にはヒナ単体だと見分けがつきません。
絶対に「カルガモだー」と思います。
画像は横浜市緑の協会よりお借りしました。
お母さんと一緒でようやく
「カルガモじゃない!えーと、あのお母さんは…まさかのオシドリ??」
とわかります。
画像は産経新聞よりお借りしました。
オスメスの色の違いがはっきりしてきたオシドリの亜成鳥。
画像は掛川花鳥園よりお借りしました。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。