危険>餅カビは削っても毒性が残ります
「お餅のカビは削れば大丈夫」
私の親世代がよく言う言葉です。
私の叔母も必ずこう言って、カビを削り取った餅を勧めてきます。
お米を粗末にしたら罰が当たる思想ですね。
(餅の原料はモチ米です)
私はお腹が弱いため、何と勧められても断固食べませんが。
そして毎年鏡開き(1月11日)が近づくと必ずこういう記事が出ます。
餅に生えるカビは以下のようなものです。
- クロコウジカビ(アスペルギウス・ニグリ Aspergillus niger)
- コウジカビ(アスペルギウス・フラバス Aspergillus flavus)
- アオカビ(ぺニシリウム・エクスパンサム Penicillium expansum)
- アカパンカビ(ニュラスパラ・クラッサ Neurospora crassa)
- ケカビ(ムコール Mucor)
これを叔母に言ったら
「あら、コウジカビ!じゃあ食用じゃない!」
と嬉しそうに返事されました。
いえいえ。
日本人はコウジカビ(アスペルギウス・フラバス)を家畜化してニホンコウジカビ(アスペルギウス・オリゼー Aspergillus oryzae/麹菌)を作り出し、味噌・醤油・みりん・米酢・甘酒・日本酒・焼酎・・・といった発酵食品を数多く発明しました。
「菌を家畜化」というと語感的に奇妙ですが「繁殖を人為的に管理可能にし、かつ人間の役に立つように改良した」という意味です。
どのように改良したかというと、毒性を持つコウジカビ(アスペルギウス・フラバス)が毒を生成しないようにしたのです。
化学的な知識も何もない時代にこれをやってしまったので、麹菌は日本人の発明品としてはトップオブトップの地位にあると絶賛する外国人化学者も多いようです。
詳しく知りたい方は「もやしもん」をどうぞ。
登場する菌で一番有名な黄色い子たちが、オリゼー(ニホンコウジカビ)です。
というわけで、ミソやショウユに入っている無害、いえむしろ有益な家畜種ニホンコウジカビ(オリゼー)と野生種フラバスは、同じコウジカビ(アスペルギウス属)でも似て非なるものです。
例えて言うなら
「イヌ(カニス・ルプス・ファミリアリス Canis lupus familiaris)が飼えるからって、オオカミ(カニス・ルプス Canis Lupus)が飼えると思うなよ」
ってとこですか。
familiaris(ラテン語)は「家畜化された・飼い慣らされた」という意味で、英語のdomesticatedに相当します。
Canis(ラテン語)は「犬/イヌ科に属する生物」 lupus(ラテン語)は「狼」を意味します。
つまり狼の学名は「イヌ科のオオカミ」犬の学名は「家畜化されたイヌ科のオオカミ」なんですね。
これも叔母に説明してみたところ・・・
私 「かくかくしかじかなのよ。犬が撫でれるからって狼が撫でれる?」
叔母「・・・私は、怖いから犬も撫でれない」
という返事でした。
お~~~い。
という話はさておき、皆さまもお餅のカビには注意してくださいね。
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