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フィリピンで日本アニメ「ボルテスV」がいまだに激熱コンテンツなその理由


これらの記事の続きです。



フランスではなぜ「マジンガーZ」を飛び越えて「グレンダイザ―」だけが視聴率100%などという異常人気を博したのか?


イタリアではなぜ日本では完全に不発に終わった「鋼鉄ジーグ」がそこまで気に入られたのか?


というあたりにももちろん興味はあります。


しかし今回はとりあえず「祝・実写化」ということで、「ボルテスV(ファイブ)」はなぜそこまでフィリピン人を夢中にさせたのか?を調べてみました。


1977年から78年にかけて日本で放送されたこのTVアニメは、1978年には早くもフィリピンに輸出されました。


その頃のフィリピンはマルコス政権です。


フェルディナンド・マルコス(1917~1989)氏は1965年に大統領に当選するや議会を停止。
戒厳令を敷き、1986年のエドゥサ革命(別名ピープルパワー革命)で政権を追われるまでの21年間、独裁支配を通しました。



<フィリピンピープルパワー革命>


マルコス大統領の独裁と特権階級優遇でフィリピン経済は停滞し、失業率は一時12.5%(つまり就業可能人口の8人に1人に職がない)を記録します。


生活苦にあえぐ庶民とは対照的にイメルダ夫人は贅沢三昧、マルコス一族・取巻きたちは汚職のし放題で、国民の不満が蓄積します。


マルコス大統領はその不満をかわす目的で1986年初頭に大統領選を行いますが、対抗勢力のアキノ女史の方が多く得票したとみるや開票操作を行い「マルコス勝利」と嘘を発表。


怒った市民デモ隊がマラカニアン宮殿を包囲すると、大統領夫妻は米軍機でハワイに亡命。

コラソン・アキノ新大統領が誕生し、独裁体制は終焉しました。



「ボルテスV」がフィリピンで放送されたのはまさにそんなマルコス独裁の最中でした。


そして「ボルテスV」では、敵・地球植民地化を狙うボアザン星の様子が描かれます。
それは一握りの王侯貴族階級が贅の限りを尽くし、王侯貴族以外を「農奴」と呼んで搾取し虐げる社会でした。


地球に派兵されて来たボアザン軍(この司令官がプリンス・ハイネル)を地球人は巨大ロボット・ボルテスVで撃ち破り、逆にボアザン星に侵攻。
それをきっかけにボアザン庶民は蜂起。
革命が起き、皇帝は倒されます。


故・長浜監督はフランス革命から構想を得たようですが、当時のフィリピンの市民にはまさに自分たちのことだと思えたのです。


かくして「ボルテスV」は1978年にフィリピンで放映が始まるや最高視聴率58%を記録する大ヒットを飛ばします。


するとマルコス政権はTV局に命じて「ボルテスV」の放送を中断させ、日本からのアニメの輸入を禁止してしまいます。


表向きの理由はこういう理屈でした。


「『ボルテスV』は日本軍国主義の復活の象徴。子供を洗脳して支配する意図に違いない」


8年後、革命によってマルコス大統領が国外に逃げた後、中断させられていた「ボルテスV」の後半部分が放送されました。


そこに描かれていたのは、まさにフィリピン人が成し得たばかりの「庶民を苦しめる独裁者を庶民が革命によって打ち倒す」というストーリーでした。


「ボルテスV」はその後何度もフィリピンで再放送され、「親子三代で知ってる」「フィリピン人が日本語で歌える日本の楽曲の代表格」となって今に至っているそうです。


そしてとうとう実写版TVシリーズまで作製されたのが「VOLTES V LEGACY」。



なるほど、そういう経緯が。
そうわかってから観るとより一層感慨深い予告映像を、もう一回貼っておきます。


アニメにご興味のないアウトドア派のあなたも、パリピなあなたも、お時間は取らせませんので是非。
5分間だけですのでご覧ください。



ちなみに昨年2022年6月に新大統領に就任したフェルディナンド・マルコス・ジュニア氏は故マルコス元大統領の長男です。


ファーストネームまで父と同じ。