人材派遣の裏話実話:派遣先で出逢った変な人❺努力するふり大好き上司
小さな小さな会社でのことです。
ある朝突然ワンマン社長(外国人)が言い出しました。
社長「エンドウさん。大至急、2,000平米級の会議場を探して下さい」
それは全体ででしょうか、まさか一室ではないですよね?
社長「一室の面積に決まってるでしょ」
私 「つくば国際会議場は総床面積2,500平米ですが、全ての会議室の合計面積です。大ホールだけなら1,500平米です。幕張メッセも同じくらいです※」
※幕張メッセは1,400平米。
以前別の派遣先で調べたことがあるので知っていたのです。
社長「じゃあ、筑波と幕張以外で探せばいいだけじゃないですか」
私 「この二つが日本最大級なんです。展示ホールでよければ他にもありますけど…」
展示ホールとは、東京ドームみたいな殺風景なただの空間のことです。
社長「ダメダメ!!(怒)先方はゴージャスでラグジュアリーな会議室専用の所を希望なの。東京ドームじゃダメ!!!」
なんでも知り合いのC国人社長から「探せない?」と頼まれたそうです。
その人も別のC国人から頼まれたとか。
C国の某金満大企業が、全社員を引き連れて福利厚生(社員旅行)のついでに日本の取引先と会議でもやってみようか〜と考えているとかいないとか。
C国が経済成長でブイブイいってた頃の話です。
上手くいけば手数料がたんまり入ると言われたらしい。
ちなみにこの社長もC国の人でした。
私 「…いったい何千人で使われるんですか?」
社長「300人くらい」
はい?
社長「300人くらい」
・・・300人収容の会議室の面積の相場は、日本では300平米です。
1人当たり1平米です。
そう説明しましたが、
社長「先方はなるべくゆったりした贅沢な空間をご希望なんです。専属カメラマンも連れて来るらしいし、狭苦しい日本サイズの普通の会議室じゃ映えないからダメ、ゼッタイ(怒)」
・・・ここは日本だぞ。
&
会議で映えとか気にすんじゃねえ(怒返し)。
👇こんな会議じゃダメなんだそうです。
社長「関東は地価が高いから狭い施設しかないんですよ。地方を探せばいいだけでしょ。先方は会議後の観光もご希望だから、地方の観光地の方が逆に良いんです!」
実はこの社長は来日から日が浅く、日本の事情にはとても疎いというか、日本式を覚える気すらなさそうな人でした。
そんな人に対しても、少々のお金をちらつかせればいとも簡単に「投資ビザ」を乱発給しているのが日本の現政権。
地方にそんなバカでかい施設を作っても使う人がいません。
それこそ国際会議でもない限り。
「地価が安い田舎に行けば行くほど、巨大な施設があるはず。なぜなら土地が余ってるから~」
なんてことは、まず絶対ありえません。
…社長はC国では~~~を乱発しますが、そのC国とてタクラマカン砂漠のど真ん中や内モンゴルの大草原の外れとか酸素の薄いチベット高原の禿げ山のてっぺんとかにポツンと2,000平米のコンベンション施設など持ってますか?
ないでしょうが。
私 「地方は都心より需要が少ないので、ありませんよ。新潟の朱鷺メッセでも、コンベンションホールはともかく、会議室は国際会議室でも幕張以下のはずです※」
※実際は700平米です。
こう言うと社長は怒り出しました。
社長「どうしてあなたは探す前に無いと言うんですか?まずはアクションを起こしてみるべきじゃないですか?日本人は何でも否定から入るからダメなんです。その点我々C国人はとにかくやってみる。走り始めてから考えるんです」
すると、そのやりとりを聞いていた別の派遣さんがすかさず手を挙げました。
別子「社長、私が探します!」
社長「おお、別子さんやってくれる?」
別子「はい。私は、やる前からあり得ないとか言うのが、大っ嫌いですから!」
👆私の方をチラ見してニヤリと笑いながら・・・。
社長「じゃあ任せるよ。2、3日それに専念していいから。通常業務はエンドウさん一人にやってもらうから」
マジか。
私が2、3日、ふたり分の業務をやるの?
別子さんは地方の会議場や貸し会議室に手当たり次第に電話をかけ続けました。
9時から5時まで。
そして丸2日が経過して、3日目。
別子「全国調べ尽くしましたが、ありませんでしたっ!つくば国際会議場で1,500平米、幕張メッセ大ホールで1,400平米です」
私 「いや、それ、まんま私が初日に言ったこと!!」
社長「あ、それね、先方がJTBかどこかに問い合わせて、正式に無いと言われて、じゃあ別に日本じゃなくて東南アジアでもいいやってなったみたいで・・・とにかくもう日本ではやらないそうです。以上!」
なんだそれ。
社長「しかし!2日間かけて一生懸命探した別子さんの努力は非常に素晴らしい!偉い!探しもしないで無いと言う人に比べたら、何倍も素晴らしい!私は別子さんの姿勢を大いに評価します!」
別子「ありがとうござます、社長!」
なにこの茶番?
私は探しもしないで無いと言ったのではなく、以前探したことがあって無いと知っているからその知識を言っただけなのに。
2日間、ふたり分の通常業務をやった(残業もした)私が、なぜそこまで言われないといけないんでしょう?
まあ残業代はきっちり請求しましたから、別にいいんですけど。
無駄とわかりきっていても努力する(ふりをしてみせる)のは尊い!賛美する!
というのは大いに疑問でした。
3ヶ月後、別子さんは契約更新、私は契約満了で終了ということになりました。
未練も何もなかったので、私は翌日から嬉々として次の派遣先に行きました。
昨年ふと思い立ってこの会社をネットで検索してみたら、もうなくなってるみたいでした。
私は人間がデキていないので、大いに留飲を下げました。
「ZAMAA!」
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