「ご冥福をお祈りします」はオールマイティーな魔法の言葉ではありません
誰かのご不幸があると必ず「ご冥福をお祈りします」コメントが溢れます。
「あけましておめでとうございます」や「いただきます」や「ありがとうございます」と同列の決まり言葉と覚えて使ってらっしゃる方が多数だと思います。
しかし、エンドウ一族(仮名)が浄土真宗なためもあり、わたしはこの言葉に軽い違和感を持つ一人です。
その理由を述べます。
「冥福」とは「冥土(地獄)での幸福」のことです
冥土(めいど/みょうど)とは仏語で以下の意味を持ちます。
❶死後の世界。あの世。冥途めいど。めいかい。
❷六道のうち、地獄・餓鬼・畜生の三悪道。特に、地獄道をさすことが多い。
類語:煉獄、奈落。
英語:hellに相当。
多くの宗教・宗派では、故人の霊魂はまず餓鬼や亡者がさまよう冥土へ旅立つとされています。
そこで本人や遺族が徳を積み、努力をすることで一部の良い霊魂が天国へ行く(仏教で言うところの成仏する)ことができるという考えです。
仏教で遺族が故人の成仏のために行うのが追善供養です。
初七日から始まり七日ごとに七回、四十九日まで行う忌日法要。
一周忌、三回忌・・・と三十三回忌まで続く年忌法要などです。
※最近は地方のよほどの旧家以外は簡略化しています。
しかし例えばキリスト教などではこういう考え方はしません。
キリスト教の死後の世界感
地獄に行くのは邪悪な人間かキリストを信じていなかった人間のみ。
キリストを信じていた者は真っ直ぐに天国に行くと考えます。
なので、今回のエリザベス女王崩御でも多くの日本人がつぶやいた「ご冥福(地獄での幸福)をお祈りします」は不適当です。
キリスト教では「Rest in peace/安らかにお眠りください」が正しい表現です。
画像は泉谷メモリアルホールより。
神道の死後の世界感
神道には天国地獄の観念じたいがありません。
魂は肉体を失った後も永遠にこの世に留まり続け、子孫を守る氏神になると考えます。
先祖の霊も一柱・二柱と神と同じ単位「柱」で数えます。
なのでやはり「ご冥福をお祈りします」は不適当です。
神道では「御霊(ミタマ)のご平安をお祈りします」です。
画像は葬儀のデスクより。
浄土真宗の死後の世界感
仏教の中でも浄土真宗は特殊で、どんな魂も悪人/善人などとふるいににかけられることなく、平等に阿弥陀如来に導かれると教えます。
つまり亡くなった瞬間極楽浄土に行って仏になるというのです。
ですから浄土真宗では「この度はご愁傷様です」と遺族の愁傷(嘆き悲しみ)を労わるだけです。
故人の幸福には言及しません。
だって葬儀が営まれる頃には故人の魂は既に極楽浄土にいると確約されているのですから。
画像は築地本願寺より。
もちろん一番大切なのは気持ちです
エンドウ一族(仮名)が浄土真宗だからといって、弔問に来られる方が同じとは限りません。
さまざま宗派の方々ですので、自分の宗派に則ったお悔やみを言われるでしょう。
優しい気持ちから発せられた言葉の言葉尻を捉えていちいち「故人は地獄にはおりません」などとは思いません。
浄土真宗は日本全体で見れば最大宗派ですが、北海道を除く東日本と四国には極端に少なく、東京ではマイナー扱いされますのでなおのことです。
ただ、それぞれの宗教に即したお悔やみが言える人はやるなあと思う、それだけです。
私は、たまに有名人の方のご訃報を記事にする時は「安らかにお眠りください」で統一するよう心がけています。
敢えて「冥土(地獄)で頑張って幸せになって」などと言う必要はないと思ってのことです。
それを他人に強制するつもりはありません。
ただ、「ご冥福」がオールマイティーな魔法の呪文ではないということだけは頭の隅に置いていただけたら、ささやかに嬉しいかなと思う次第です。
画像はLoveGreenより。
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