慣用句:カモシカのような脚…え?カモシカの脚は短いのになぜ?<後編>
<前編>はこちらです。
まず、カモシカはシカではない
まずいきなりで恐縮ですが、そもそもカモシカはシカではありません。
偶蹄目ウシ科ヤギ亜科です。
なので脚もヤギと似ていて、どちらかというと短かめ。
しかもカモシカは山岳地帯に暮らすため、山の斜面を上り下りできるよう、太め。
☟体型がそっくりな、ヤギとカモシカ。
なのになぜ「女性の脚がスラッとしてる!と褒める時の慣用句」になったかというと、ただの勘違いでした。
元々はカモシカではなくガゼルだった
英語に「ガゼルのような脚」という言葉があるそうです。
ガゼルとはウシ科ブラックバック亜科ブラックバック族ブラックバック亜族のガゼル属 ・トムソンガゼル属・ダマガゼル属 の総称です。
ガゼルはアフリカとユーラシアのインド・モンゴル周辺に分布していて、欧州ではとても馴染み深い草食動物のグループです。
日本でも人気のブランド「サマンサ・タバサ」で知られる女性名「タバサ」。
これは聖書に登場するドルカス(ギリシャ語)という女性のアラム語(古代西アジアの共通語でイエス=キリストの母語だった)形・タビタが語源です。
そして、タビタの意味はズバリ「ガゼル」です。
「ガゼルのようにスラリと長く、引き締まって優美な細い脚」
というのが、聖書が発生した頃には既に女性に対する誉め言葉だったことが伺えます。
しかし日本にはガゼルはいません。
今なら動物園にいますが「ガゼルのような脚」という言葉が日本に入ってきた、おそらく明治時代頃の日本人には全く姿が想像できませんでした。
「レイヨウ」という日本語があります。
哺乳類偶蹄目ウシ科からウシ亜科・ヤギ亜科を除いたものの総称です。
イランド・インパラ・トムソンガゼル・オリックスなど、一見して鹿に似ている、四肢が長く細く角を持つ動物をざっくり総称した言葉です。
そこで当時の日本人は「ガゼルのような脚」を「レイヨウ(羚羊)のような脚」と訳しました。
カモシカもレイヨウも漢字で羚羊と書くのが勘違いの発端
すると一部の人が「羚羊のような脚」を「カモシカのような脚」と読みました。
羚羊に①レイヨウ②カモシカという二通りの読み方があったためです。
ここで「カモシカのような脚」という慣用句が爆誕した、ということのようです。
どっちも羚羊。
今の若い人は使わなくなってますので、そのうち死語になりそうな「カモシカのような脚」。
ちなみに私は、言われたことがありません!
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