自己紹介で「お花と申します」はないよね:昭和末~平成頃の時代劇の話
大昔の白黒映画期の日本の時代劇には感心します。
史実通りに既婚女性が引眉(眉毛がない・わざとそり落とす)、鉄漿(お歯黒)をしているものがけっこうある。
時代考証ってやつです。
黒澤明の「羅生門」。
女性は京マチ子(1924~2019)。
お歯黒は今でこそギョッとされるビジュアルですが、虫歯予防の意味合いがありました。
今で言うなら歯医者に定期的にフッ素を塗りに行くようなものです。
意識高い系です。
実際身分の高い女性ほどきちっとやっていたので、当時はステイタスでもあったと言われています。
近年でも大泉洋主演映画「駆込み女と駆出し男」でお吟を演じた女優の満島ひかりさんがお歯黒&引眉姿になって「根性ある」とか言われましたが、あれが既婚女性の証だったわけです。
そして今日のテーマはこの「お吟(ぎん)」のお。
タイトルでは「お花」のお。
昭和末期から平成にかけてのTV時代劇では、名前を尋ねられた女性が
「お吟と申します」
「わたしはお花でございます」
と自己紹介するのが普通に見られました。
また親も親で自分の娘を人に紹介する時に(相手が自分より身分の高い人であってもお構いなしに)
「これがうちの娘のお吟でございます」
「どうか娘を、お花をお助けくださいまし、お侍様!!」
と大真面目に言いなさっておりました。
これ、おかしいです。
おは丁寧語の御。
つまり他人に対する敬称です。
「お吟さん」「お花さん」と言うのは、侍を「お侍さま」、僧を「お坊さま」、姫を「お姫さま」と言うのと同じ。
名前はあくまで吟&花。
庶民の娘なら漢字ですらなく、ひらがなでぎん&はなかもしれません。
つまり上に挙げた
「お吟と申します~」
「わたしはお花でございます~」
は現代風に言うと
「ぎんちゃんで~す」
「はなりんだよ~~~♡」
カレP⤴
となって、他人への自己紹介にしては不適切にもほどがありませんでしょうか。
親の方も親バカにもほどがあります。
そういうおバカキャラなんだよ~という意図的演出とか、そもそも時代劇を現代風に演出した荒唐無稽なストーリーなんです、とかいうのでない限りは
「ぎんでございます」
「はな、ともうします」
じゃないと私の違和感が仕事をし過ぎてしまいます。
ただ、最近はTVドラマから時代劇自体がほぼなくなりました。
それはそれで寂しい。
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