現生人類が歩いた長い長い旅路~人類は本当に最近まで旅を忌み嫌っていたのか?
ほんの数百年前(中世まで)旅(生まれた土地を離れること)は苦痛と思われていたことを書きました。
しかし現生人類(ホモ・サピエンス)は本当に、アフリカに発生した240万年前から数百年前までの239万9千数百年の間ずっと、見知らぬ地(新天地)を嫌っていたのでしょうか?
グレートジャーニー
アフリカに生まれた人類が世界中に拡散していった大いなる旅路を、イギリス人の考古学者ブライアン・M・フェイガンは「グレートジャーニー」と名付けました。
※これから書く年代については異説もあることを予めご了承ください。
今から240万年前のアフリカ大陸に霊長類ホモ・ハビリス(ラテン語で「器用な人」)とホモ・エレクトス(同「直立した人」)が出現します。
人類の誕生と言われています。
それから220万年後、ホモ・エレクトスの亜種のひとつであるホモ・エルガステルからホモ・サピエンス(同「賢い人」)が誕生しました。
今から20万年前、現生人類の誕生です。
ホモ・エレクトスとは別種または亜種(二つの説がある)のホモ・ハイデルベルゲンシスから誕生したネアンデルタール人は、それより少し早く出現していました。
「全部にホモが付いてホモホモめんどくさっ!」と思われた方。
ホモはラテン語で「ヒト(人)」という意味です。
日本人・アメリカ人・インド人・アラブ人…という風に「全部に人が付く」のと全く同じですので、ここはしょうがないと我慢してください
誕生から約14万年間、ホモ・サピエンスはアフリカだけで暮らしていました。
ところが6万年前に徒歩でアフリカ大陸の外へ移動を始めます。
それはこのような道筋だったと考えられています。
もちろん「出アフリカ」を果たした全てのホモサピエンスが最終地(南アメリカ大陸の最南端まで・アフリカ大陸中央部からは約5万㎞)に到達したわけではありません。
また一代で歩ける距離ではありません。
当時のホモ・サピエンスの寿命は15歳~せいぜい20歳と思われます。
少し移動しては子を産み育て、その子がまた少し移動して、を繰り返します。
もちろん気に入った土地に定住する人もいます。
何代か定住してから家族の一部がまた移動を始めることもあったでしょう。
それでも何かに突き動かされるように、我々の祖先は5万㎞を歩いたのです。
行く先々の環境・自然条件はもちろんさまざまです。
熱帯雨林、砂漠、北極圏、高山。
例えばこれが虎や熊ならば、熱帯雨林に住む種と雪に閉ざされた高山に住む種は亜種や別種になります。
しかしホモ・サピエンスはホモ・サピエンスのまま(亜種が分化したりすることはなく)これら全ての環境に適応して住み着きました。
私たちの祖先を突き動かした移動欲・拡散欲が何だったのかはまだ解明されていません。
しかしひとつだけ言えることは、人類は数千年前に文明を築き始めるまでは旅が嫌いではなかったはずだということです。
文明が始まり牧畜や農作をするようになると、人類は急激に土地に縛られ始めます。
「生まれ育った土地を出ることは苦痛である」という価値観に支配されるようになり「苦痛」という語源から「旅」という言葉が生まれます。
しかしそれは人類20万年の歴史の中のほんの数千年間「のことです。
そして2~300年前に人類は再び旅は苦痛ではないと気付き始めて今に至ります。
宇宙開発に反対する人は「地球の環境問題の方が先だ」と言います。
「今住んでいる土地をおろそかにして新天地を求めるなど愚かだ」という考えです。
20万年前、ホモ・サピエンスがグレートジャーニーを始めた時も、同じことを言う人がいたのではないかと私は思います。
全員が移動欲に突き動かされたわけではないからこそ、今もアフリカに14億もの人が住んでいるわけですから。
しかし「アフリカを出たことが種としての愚行だったのか」と今問えば、否でしょう。
私は宇宙開発賛成派です。
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