鳥羽シェフに日本語のセンスがナッシングなことはよくわかりました
イタリア語の「貧乏人のパスタ Pastai del poverello」を引き合いに出して自己正当化していますけど、意味合いが違うと思います。
「貧乏人のパスタ Pastai del poverello」が生まれたのは第二次世界大戦で敗戦国となり、苦しかった時代のイタリア。
皆が等しく貧しく窮乏する中で工夫された、卵とチーズしか使わない(色々な食材を使えない)レシピのパスタのことです。
画像はオレンジページよりお借りしました。
同じく敗戦国となった日本では同じ頃その卵だって贅沢品で、芋の茎などを混ぜて増量したタンパク質レスの雑炊などが食べられていました。
そう考えれば、貧乏と自虐する割にはずいぶんと余裕じゃん!とも思うんですが。
イタリア人としても「卵とチーズを使っときながら貧乏人を自称するのはどうよ?」と思う人もいるのかどうなのか知りませんけど、更に材料の貧しい、ニンニクと唐辛子しか使わないペペロンチーノのことを「貧乏人のパスタPasta del poverello」と呼ぶバージョンもあります。
ちなみに日本人がただ「ペペロンチーノ」と呼ぶ例のアレ、のイタリア語での正式名称は「ニンニクと油と唐辛子のパスタ Pasta aglio, olio e peperoncino」です。
この画像もオレンジページよりお借りしました。
aglioアーリオ(ニンニク)、olioオーリオ(油/イタリア語では油と言えばオリーブ油のこと)e(&)peperoncinoペペロンチーノ(唐辛子)と素材を余すことなく列挙しているわけです。
イタリア人、特に南イタリア人はパスタに悪ノリした名前を付けるのが大好きです。
他にも「娼婦のパスタ Pasta alla Puttanesca」や「絶望のパスタ Spaghetti alla disperata 」果ては「暗殺者のパスタ Pasta all'Assassina」などというものがあります。
日本でもおなじみの「アラビアータ」も、日本人は意味など考えずに「アラビアータ下さーい」と注文していますが、その意味は「怒りん坊の(パスタ)」です。
同じく「ペスカトーレ」は「漁師の(パスタ)」です。
日本では「キノコのパスタ」と訳されてしまい原語はほぼ使われない「ボスカイオーラ boscaiola」は「木こりの(パスタ)」です。
それぞれの名前の由来は以下の通りです。
※中には諸説あるものもあります
- 貧乏人のパスタ :少ない素材でOKのパスタ
- 娼婦のパスタ :娼婦のように刺激的な(味の)パスタ
- 絶望のパスタ :絶望中で食欲が無くても美味しく食べれるイワシのパスタ
- 怒りん坊のパスタ:唐辛子が効いてるから食べたら顔が怒ったように赤くなるパスタ
- 暗殺者のパスタ :「殺人級に旨い」パスタ
- 漁師のパスタ :海鮮素材のパスタ
- 木こりのパスタ :キノコのパスタ
私が何を言いたいかと言うと、イタリア語はそもそも全体のノリがコミカルだから「貧乏人のパスタ」とか「娼婦のパスタ」とネーミングしても寛容に受け入れられれるのだと思います。
英語圏でもそれを踏まえた上で「Poor Man’s Spaghetti」などと称されています。
翻って日本はどうか。
何も乗ってないうどんだろうが「貧乏人のうどん」とは言いません。
「かけうどん」です。
「なんにも乗ってないわけじゃない。ちゃんとおつゆがかかってるじゃないか!」
海苔すら乗ってなくとも「ちゃんと器に盛ってるじゃないか!」で、もりそば。
これが日本人のセンスなんです。
直截的に「貧乏人用メニュー」と表現するのは、本人が言うなら自虐ギャグ。
もしくは本当に貧乏な芸人やら無名の物書きが言うなら、まだ自虐ギャグ。
しかし他人が言ってしまうと角が立つ。
それが料理を提供して対価を取る立場のヒト、つまり料理人ならなおさら。
「社畜」の用法と同じです。
被雇用者が自称するならギリ自虐ギャグ。
しかし雇用する側が「社員など社畜だ」と言おうものなら、ブラック確定。
なんなら労基署通報案件。
それと同じです。
鳥羽氏は日本語のセンスが絶望的に無い、ことを確信しました。
上の記事では「いい意味で、ことば遊び、シャレみたいなもの」という擁護コメントが紹介されています。
そういう人は、自分に渡された「給料振込明細」が「社畜の餌代」と表記されていても全く同じことが言える素晴らしい人格者なのでしょう。
脱帽です。
私には無理です。
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