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マスコミは簡単に日本語を変える~「知床旅情」の功罪~


この記事から続いています。


故・森繁久彌氏が映画のロケ地を出立する朝に村人たちへの別れの挨拶として即興で作った「知床旅情」の歌詞。


「知床旅情」


知床の岬にハマナスの咲くころ

思い出しておくれ俺たちのことを

飲んで騒いで丘に登れば

遥か国後(クナシリ)に白夜は明ける


旅の情けか呑むほどにさ迷い

浜に出てみれば尽き果てる波の上

今宵こそ君を抱きしめんと

岩陰に寄ればピリカが笑う


(3番割愛)


ところがこれがレコード大賞を受賞するほど大ヒット。


ヒット後に


「美女(アイヌ語で『ピリカメノコ』)」のつもりで使った『ピリカ』は、現地の方言では『ホッケの幼魚』の意味だった」


ことを知った森繁氏。
誤用を晩年まで長く気にしていたそうです。


ところが現実は逆でした。


「歌は世につれ世は歌につれ」を体現するかのように、現地方言の方が変遷。
「ピリカ=美女」という新しい意味が爆誕してしまいました。


しかし実はこの「知床旅情」、もっと日本語を変えてしまっていたのです。


それはこの部分。


遥か国後(クナシリ)に白夜は明ける


白夜の読みは元来「はくや」だった


森繁氏は上の歌詞を「びゃくやはあける」と歌いました。


しかしこれが実は大きな間違いでした。


「白夜」の読み方は「はくや」であり「びゃくや」という読み方は存在しませんでした。


ところが「知床旅情」が大ヒットしたことで、日本人1億 人(1971年の国勢調査における日本の総人口は1.057億)が「白夜」を「びゃくや」と発音し始めたのです。


下の記事では「知床旅情」以前にも一部のマスコミが「びゃくや」というフリガナを使用した例がある、とあります。



森繁氏もどこかで「びゃくや」と耳にしたことがあったためにそう歌ったのでしょう。


しかし「知床旅情」の大ヒットが「『びゃくや』読みがむしろフツウでしょ」現象を起こしたことに間違いはなさそうです。


NHKが1980年(昭和55)年年に行った有識者アンケートでは「白夜」を9割以上の人が「ビャクヤ」と読むと回答したそうです。


これを受けてNHKは1980年から「白夜のビャクヤ読み」を正式に採用。
現在に至っています。


  • 1955(昭和30)年発行の広辞苑第1版(岩波書店)には「白夜(はくや)」しか掲載されていない。
  • 1976(昭和51)年発行の広辞苑第2版(岩波書店)には「はくや」に加えて「びゃくや」の掲載がある。

(出典:レファレンス共同データベース)


つまり「知床旅情」が「白夜」の読みを変えてしまったのです。


森繁氏がこちらを気にしていたかどうかは全く資料がなく、わかりません。


それから、これは歌がヒットした当初から指摘されていたそうですが・・・


そもそも北海道に白夜はない


白夜(Midnight Sun)


地球の両極地(北極圏・南極圏)でのみ見られる現象。

太陽が沈まない、または太陽が沈んでも暗くならない現象のこと。 

北極圏付近では夏至(6月21日頃)前後、南極圏付近では冬至(12月21日頃)前後に見られる現象。



これは地球の地軸が傾いているために置きます。


画像はウェザーニュースよりお借りしました。


上の図をよくご覧ください。


一方の極が「一日中太陽が沈まない=白夜」の時、
もう一方の極では「一日中太陽が出ない=極夜」が起きています。


これらの現象は北海道では起きません。
北海道は北極圏ではないからです。


北極圏(Arctic Region):北緯66度33分以北の地域を指す。


北極圏画像は時事エクイティよりお借りしました。


北海道どころか、その北の北方領土よりさらに北のカムチャッカ半島すら含まれていません。




森繁氏がこちらを気にしていたかどうかも全く資料がなく、わかりません。