離婚率と労働時間を根拠に「昔はよかった」に反証する・後編(労働時間編)
この記事から続いています。
昔はよかったさんは、このようにおっしゃることもあります。
「昔の日本人は勤勉だったのに、今時の若い子は定時しか働かず私生活のことばかり考えて勤労意欲が希薄。(嘆かわしい)」
しかし例えば江戸時代の労働時間は、農民を除けば今と同程度かむしろ短いものでした。
職人の場合はだいたい拘束10時間くらい。
しかし大工や左官などの外勤の職人は、雨が降ったら休み。雪が降ったら休み。
店を持たない行商人は売り切り仕舞いなので、実労4時間から6時間くらい。
店を構えるクラスの商人で拘束12時間くらい。
農民はそれ以上だったようですが、農民の場合は年貢が重く搾取されていたため。
それに引き換え武士階級は、藩によっては1勤2休(1日出勤したら2日休み)という所もあったと記録が残っています。
月に直すと、30日中出勤10日/休み20日。
これは極端な例としても、例えば江戸城勤務の下級武士のシフトは2勤1休の繰り返しだったといいます。
月に直すと30日中出勤20日/休み10日。
現在の完全週休二日制以上の休暇日数です。
出勤日の拘束時間も今よりうんと短い所がほとんどでした。
だいたい4時間から6時間でお勤め終了だったそうです。
それが欧米からエコノミックアニマルと揶揄されるほどのワーカホリックになり、バタバタ過労死するようになったのは、やはり高度成長期からバブル期を経て最近までの数十年に過ぎません。
また一日の労働時間が短い=楽して稼いでいる=怠け者(つまり額に汗さえすれば尊いという非効率な根性主義)といった発想は希薄です。
「一年を二十日で暮らすよい男」
という、当時の力士を詠んだ川柳があります。
江戸時代の相撲興行日は、江戸の定場所の場合、春・秋の年2場所・各10日。
つまり力士は年間20日仕事をすれば1年間暮らせるだけの収入が得られる。
何と羨ましい!というのです。
実際は地方巡業や大名屋敷に呼ばれるなどの細々した営業活動があったようですが、ともかく上の川柳は
「最小限の労働で最大限に暮らせるのは、すてきなことだ」
という素直な称賛に満ちています。
他にも
「昔の日本人は転職なんて滅多にしなかった。今の若い子は堪え性がない。ちょっと怒られただけですぐ転職する」
とか
「ペットは昔の方がのびのび飼われていて幸せだった。今は玩具扱い」
とか
「昔は自然が今よりはるかにキレイだった。今は川も空気も汚れて嘆かわしい」
とか・・・
まだまだ色々な嘘…いや錯誤がありますが、全部解説し出すとくどくなるので、離婚率と労働時間の二例だけでやめておきます。
さて、こういう意見を言うと必ず
「へえ~じゃあエンドウさんは安易な離婚・再婚やジョブホッピングを推奨してるんだ。へえへえ~~人としてどうよそれww(鼻で嗤う)」
といった感じの反応を返してくる方がいらっしゃいますが、違います。
私は、そういう方たちが近視眼的にそこだけしか見ていない、わずか数十年間という期間限定の昔よりも、もう少し広い範囲の昔の史実を述べているだけです。
昭和からせいぜい平成までの特異な一時期だけが昔の日本ではないし、それ以上に、あるべき日本の姿(模範)でも基準でもないと言いたいだけです。
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