「幸福の王子」の自己満足だめんずっぷりに辟易した幼時の思い出
ムラゴンブロガーの茶々さんが好きな童話・嫌いな童話を挙げてらっしゃいました。
嫌いの中に「幸福の王子」がありました。
この5文字を見た瞬間、幼稚園児の頃の憤りがフラッシュバックしたわたくしです。
「幸福の王子」(原題「The Happy Prince」)とは
王子の銅像が自己犠牲を払って慈善を働き、貧しい民を幸福にする話。
(一行あらすじ)
色んな出版社から出ています。
左は講談社英語文庫、中央は偕成社文庫(井村君江訳)、右は日本基督教団出版局(ハードカバー/木原悦子訳)
下は貴重な曽野綾子訳版。
出版社は、「へんないきもの」シリーズで一発当てたバジリコ。
貧しい民を幸福にする話です。(二度目)
・・・ですけどね!(憤りモード)
「幸福の王子」は厳密には童話というより、アイルランド人の癖強め作家オスカー・ワイルドが書いた子供向け小説(ジュヴナイル)です。
全身を金箔で覆われ、目には青い宝石を嵌め込まれた王子の銅像。
彼は、その金箔やら宝石やらを貧しい民草に施(ほどこ)そうとします。
しかし、いかんせん動けないので、ツバメをパシリに使います。
園児ミリエはツバメが不憫で泣いた
ツバメは王子に頼まれた通り、せっせと王子の身体から金箔をはがしては王子が選んだ対象(貧しい民)に届けます。
完全なボランティアです。
そうこうしているうちに季節は移り、冬が迫ります。
ツバメは子どもでも知ってる渡り鳥です。
早く南に渡らないと命が危ないんですが、何せ尊い慈善行為ですから、一身上の理由でもう辞めますとは言い難い。
仲間がどんどん旅立つ中、ひとり居残って王子のパシリを続けるツバメ。
ある日ツバメは、とうとう力尽きて死んでしまいます。
やりがい搾取、労災、過労死という言葉が頭に浮かびます。
ツバメは完全肉食(昆虫食)だから、スズメに混じってパン屑つついて越冬サバイバルなんて不可能ですから。
※スズメは夏は昆虫を食べ、昆虫の少ない時期は穀物などでしのぐ逞しい雑食性です。
ブラックバイトならぬ、ブラックボランティア。
労災とか過労死といった言葉を知らなかった園児ミリエですが、ツバメが死んだシーンで大泣きしたことだけは覚えています。
誰が幸福になれたのか?
ツバメの死に心を痛めた王子の鉛の心臓は、音を立てて割れてしまいました。
死んでからいくら泣かれても遅いんだよ!
そもそも、銅像の金箔が毎日少しづつはがされて、目に嵌め込まれていた宝石が片方ずつ無くなって…となれば、周囲が気付きますよね。
警察含めて皆が疑うのは、窃盗ですよね。
そこへ、王子が恵んだ(運ばされたのはツバメ)宝石や金箔を手に、ノコノコと換金にやって来る貧しい民。
両替商「おい、こんなものをどこから手に入れた?」
- 店は即、警察に通報。
- 警察は即、庶民を逮捕。
- 庶民は即、投獄されて処刑。
普通はこうなるでしょう。
むしろこれ以外のヴィジョンは浮かびません。
ツバメは死んで不幸。庶民は罪人にされて不幸。
つまり、幸福なのは独りよがりの自己満測男、王子ただ一人だけ。
ダメだこいつ。
体重20gの小鳥に宝石とか運ばせるんじゃないよ!
ツバメさんも、もう二度とやりがい搾取に騙されないように。
画像は日本気象協会よりお借りしました。
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