映画レビュー>「コンクリートユートピア」(2023年韓国映画)
本国(韓国)公開:2023年8月9日
日本公開 :2024年1月5日
日本公開からわずか5か月でAmazonプライムビデオの会員無料に登場です。
いくらなんでも5か月では、2,000円近く出して劇場で観た人から不満が出るのでは?と、おののきながら無料鑑賞しました。
キャストのうち主役クラスは3人です。
イ・ビョンホン(下画像中央)
パク・ソジュン(右)
パク・ボヨン (左)
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一行あらすじは映画ナタリーから拝借します。
大地震で廃墟と化したソウルで、唯一残ったマンションの生存者たちが、住民の主導者を立てユートピアを築こうとする。
第96回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表作品に選出された。
ここから下はネタバレです。これから観る予定の方はご注意ください
え?設定では地震なんですか??
地面がボコボコと隆起していく謎の自然災害が、イマドキにしては一目でCGとわかるCGで描かれていました。
「地震大国日本」で暮らしている私には地震には見えませんでした。
「パラサイト半地下の家族」で起きた災害は「漢江の氾濫」。
これは実際に繰り返し起きている水害ですし、それによってスラム街の半地下物件が浸水するというのもまた実際に何度も起きていることです。
だからリアリティがあって引き込まれたのですが、この「地面の隆起」はリアリティがナッシング。
どちらかというと、日本人にはお馴染みのウルトラマンシリーズで
「地底怪獣(モグラみたいなの)が地表にこんにちは」
する時に酷似。
ハリウッド映画で言えば「トレマーズ」。
とにかく「隆起」なんです。
そして建物が全壊する中、見渡す限りの中で唯一、傾きもせずに無傷で無事だったマンション。
名前は「皇宮(ファングン)アパート」(日本語字幕)です。
十数階建ての鉄筋コンクリート集合住宅ですが、日本人の目から見るとマンションというより「団地」に見えます。
決して基礎・耐震工事にお金をかけまくった要塞仕様ではありません。
また劇中で
「近所のもっと高級マンションの住人たち(偉そうな態度の議員含む)が避難させろと言ってくる」
「しかし『今までこっちを見下してバカにしてたくせに、虫が良いんだよ』と追い返される」
という場面があり、建物の耐震グレードとかはあまり関係ないようです。
ここがもう不自然すぎる。
上画像でもわかる通り、肉眼で見える範囲でわかりやすく唯一無事だった建物です。
当然のように外部からの侵入や侵入者による放火などが起きます。
住民たちは、団結と自衛のために自治団というか自警団というかを結成することにします。
そこで婦人会長の鶴の一声で「代表」に選ばれたのが、イ・ビョンホン演じる謎の男。
彼が小さな小さなかりそめのユートピアの中で権力を得て、独裁者に変貌していくのがこの映画の見所、という構成になっています。
さて建物(だけ)は無事だったもののインフラは止まったし、各家庭が備蓄している食料などせいぜい一週間分です。
また政府などから救援が来る気配も全くありません。
ひょっとしたらソウルどころか国全体が一瞬で被災したのかもしれません。
「軍隊経験のある男性」という条件で結成された自警団は、毎日のように外に「食料探し」に出かけることになります。
「食料探し」というと聞こえが良いですが、商店主が生存している場合などは食糧強奪のために殺人もします。
そうやって持ち帰った戦利品(食糧)を「働き(貢献度)に応じて各戸に配給」します。
パク・ソジュン演じる20代の夫・ミンソン(被災前は公務員)は、妻のためにも少しでも配給を多くもらおうと、自分の良心を殺して貢献度を上げます。
しかしパク・ボヨン演じる20代の妻・ミンファ(被災前は看護婦)は、この自治体制自体に不満を抱いています。
そして…。
さすがにラストまで書くのはネタバレ過ぎなのでやめます。
感想と評価
ミンファが、自分はアパートから一歩も出ることなく安全地帯から、夫にだけ
「もう(略奪は)やめて。配給は、私の分だけで足りるから」
と偽善を投げつけ続けるのにイラァとしました。
その配給ってのが、略奪品そのものなんですよ。
全員が「食料探し」をやめたら、配給する物自体がゼロになるんですよ。
「配給は私の分だけで足りるから」
って、感覚がズレまくってませんか?
自分の夫さえ加担しなければ、他の住民が時には強盗殺人を犯してまで略奪してきた「配給食糧」で足りる(つまり当然のようにもらって平気で食べる)んですか?
「略奪以外に食糧を調達できる手段を私が考え出して、実行して皆を飢えさせないから」
もしくは
「飢え死にしてもいいから、こんな所は私一人でも出て行きます」
を、言うだけでなくスパっと実行できて初めて、夫を非難できるのでは?と思いました。
偽善者怖い。
評価:☆☆(2.4/5点満点中)
![](http://public.muragon.com/zeyhbjuj/3qkaa87l.webp.png)
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