フランス語entre chien et loup(犬と狼の間)の意味が日本語に似ていてびっくり
フランス語に
entre chien et loup(アントレ シアン エ ルー/犬と狼のあいだ)
という表現があります。
「わかった!オオカミとよく似てるハスキー犬のことでしょう!」
惜しい気もするけど、違います。
シベリアンハスキー画像はワンちゃんホンポよりお借りしました。

ヨーロッパオオカミ画像は「いこーよ」よりお借りしました。

entre chien et loup(犬と狼のあいだ)は「夕暮れ時」「黄昏時」を意味します。
標準的な言葉では crépuscule(クレピュスキュル)。
語源はラテン語の creper(クレパー/不明瞭な)です。
電気のなかった時代、夕暮れ時になると急に視界が悪くなり、物の輪郭が不明瞭になりました。
なので、薄暗がりの中からぬらりと現れた生き物が
「犬なのか、狼なのか、咄嗟に見分けがつかない」
ということで、entre chien et loup(犬と狼の間=犬なのか狼なのかはっきりしない、曖昧だ)もまた、「夕暮れ時」「黄昏時」を表す言葉になったのです。
日本語の「たそがれ」は今こそ「黄昏」なんていう洒落た当て字が使われますが、もともとの語源は「誰そ彼(たそがれ)」でした。
薄暗くて人の顔もぼやけて見分けが付かず「あの人は誰だ?」という意味です。
なんというか、表現が違うだけで感覚はとても似ています。
日本語にはさらに、最近はホラー系創作物などでしか使われなくなりましたが
「逢魔刻/彷魔刻(おうまがどき)」
という表現もあります。
「大禍時(おおまがどき)」
という別表記もあります。
「大きな禍(わざわい)が起きやすい時間帯」という意味です。
これだけ電気の普及した現代でも、夕暮れ時は事故、特に交通事故が多くなる時間帯ですから、納得ですね。
昼(人間の活動時間帯)と夜(妖怪・魔物の活動時間帯)の境目は、お互いがすれ違ってもよくわからない。
つまり「逢魔刻」とは「すれ違うナニカがヒトなのか、ヒトならざるモノなのか、薄暗さのせいで曖昧だ」という意味です。
ちなみに江戸時代までの日本人は、オオカミに関しては「益獣を通り越して、もはや神」と崇めていましたので、魔に例えるようなことはしません。
そもそも「オオカミ」の語源は「大神」でした。
⇩二ホンオオカミを神格化した「大口真神(オオクチノマガミ)」
愛称は「おいぬさま」、 画像は三峰神社(埼玉)。

日本人(農耕民族)が二ホンオオカミを益獣として神格化までしたのは、農作物を食い荒らすシカやイノシシを捕食したためです。
※日本オオカミより腕力の強いはずのツキノワグマは、雑食性のせいもあってあまり猪を狩ろうとしません。めんどいから。
一方、欧州人(牧畜民族)にとってはオオカミは家畜を捕食する害獣、かつ恐怖の対象でした。
つまり
日本語 「人か魔か不明瞭」 =逢魔刻
フランス語 「犬か狼(魔)か不明瞭」=犬と狼のあいだ
という表現差になっていますが、こちら側に棲むモノかあちら側に棲むモノか…という対比を使って、言わんとしているところは共通しています。
びっくりするほど。

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