映画評>出鼻をくじかれて途中で観るのをやめた「氷の上のふたり」
Amazonプライムビデオで「氷の上のふたり」という、動物物の映画を見つけました。
CGではなく本物の熊を使って撮影しているようなので、観始めたのですが…。
原題:MIDNIGHT SUN(真夜中の太陽)
2014年 /カナダ・イタリア合作映画
ジャンル:サバイバルアドベンチャー
<あらすじ>
カナダに住む少年ルークは、母親からはぐれた迷子の白熊の子供を発見。
母熊が人間に捕らえられ北極圏のレゾリュートに送られたと知ったルークは、自分一人で子熊を母親のもとに返そうと決心する。
少年と子熊は無事母熊のもとにたどり着けるでしょうか?
ところが、肝心の子熊登場で固まってしまったワタクシ。
これ、白熊(ホッキョクグマ)じゃないやんか。
北極圏で暮らすホッキョクグマの特徴は、体温を逃がさないため、かつ出っ張った部分が凍傷になるのを避けるため、極力凸凹の少ない滑らかな体型をしていること。
凍傷になりやすい耳は、極限まで小型化されています。
脂肪が分厚いため、ホッキョクグマの子供は「リアル縫いぐるみ」と形容されるほど、真ん丸でポテポテでムチムチでおでぶです。
将来的には「クマ科最大の生き物」に成長するため、四肢はとにかく太く、手のひらが巨大。
画像は朝穂山動物園とWikipediaよりお借りしました。
一方下が映画の熊。
痩せすぎやー。
耳はデカいし、腕は細いし長いし、この体型はどう考えてもホッキョクグマではないでしょう。
ヒグマの白変種ですね。
「少し大きくなって、顔が長くなったホッキョクグマじゃないのー?」
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、下をご覧ください。
愛媛県とべ動物園で完全人工飼育されたことで有名になったピース(今年で24歳)の、ちょっと大きくなった頃のメモリアル写真です。
顔が長くなっても、ぶっとい首、やはり小さい耳、大きな頭蓋、太い四肢といったホッキョクグマの特徴は変わりません。
上の熊との体型の違いは明らかでしょう。
映画の熊は、調べても
「この映画の撮影のために中国の水族館からわざわざカナダに空輸された子熊を、動物トレーナーが演技指導した」
としかわかりませんでした。
なのでヒグマの白変種というのは私の推理に過ぎませんが、間違ってはいないと思います。
なぜならヒグマやツキノワグマの白変種、あるいはアルビノは全く珍しくないからです。
1902(明治35)年、上野動物園にドイツから日本初となるEisbär(アイスベア)が海輸されてきました。
そうか、ドイツ語ではEisbär(アイスベア=氷熊)って言うんですね。
その時、上野動物園にはすでにアルビノのツキノワグマとアルビノのヒグマがいて、「白熊」として公開されていました。
そこで、区別するためにアイスベアは「北極熊」として公開されました。
この熊の日本語正式名称である「北極熊/ホッキョクグマ」が爆誕した瞬間です。
ちなみにこの熊を意味する各国語の表現は、以下の通りになります。
<各国語の表現> ※一番右は直訳した意味
学名(ラテン語):Ursus maritimus :「海に棲む熊」
ドイツ語 :Eisbär(アイスベア) :「氷熊」
英語 :Polar Bear(ポーラーベア ) :「極地熊」
フランス語 :Ours Blanc(オウスブラン ) :「白い熊」
イタリア語 :Orso Polare(オルソポラーレ) :「極地熊」
スペイン語 :Oso Polar(オソポラ) :「極地熊」
中国語 :白熊(Báixióng パイション) :「白い熊」
ロシア語 :Белый Медведь(ビェリ・メドヴェチ):「白い熊」
ノルウェー語 :Hvit(ヴィーツ) :「白」
学名は「海に棲む熊」と、その潜水能力の高さに主眼を置いているのに対し、欧州系言語は海をガン無視して「極地熊」派と「白い熊」派の二大派閥に分かれております。
そこに「氷熊」と氷をブチ込んでくるドイツ語に個性を感じていたら、「白」だけで白熊を表現するというまさかの力業を見せたノルウェー語が、最後をかっさらって行きました。
話が脱線しましたが、ともかく
「この熊、白変種のヒグマやん…」
と思った瞬間、なんだか見る気が失せてしまって、再生を止めてしまいました。
続きを観る気が起きる日は、未定です。
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