HSS型HSP🌏Millieの脳内世界

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It is getting hotter.
Be careful not to eat too much cold food.
This year's ducklings will hatch soon.
How many ducklings will we see ?

映画「ザ・ミスト」(スティーブン•キング原作・2007年)レビュー


嵐の翌朝突然発生した濃霧のせいで、スーパーマーケットの店内に閉じ込められてしまった客。


片田舎の設定ゆえ客の中には金持ちも有名人もいません。
顔見知りばかり。
やや生活にくたびれた感じの、ごく普通の庶民が数十人。
田舎特有の人間関係のしがらみが色々とありそうです。


一方霧の中に潜む、現実ものとは思えないような何か。
どうやらそれは生き物で、見境なく人間を襲うらしい。


籠城を余儀なくされる客は、不安な心理ゆえに些細なことで分裂・対立し…。


スティーブン・キング原作×フランク・ダラボン監督という組合せは、名作「シューシャンクの空に」や「グリーン・マイル」のコンビです。


しかしこの映画は冒頭から「ヒューマンドラマにはならないな」感が漂います。



スーパーマーケットは、一時的な籠城の場としては悪くないだろうと思います。
少なくともスポーツジムの中や駅舎の中に閉じ込められるよりはましでしょう。


だって食糧と水が売るほどありますから。


しかし所詮は烏合の衆。


一人の宗教おばさん(「私には神の声が聞こえる、私に従え」と周りを洗脳し始める人)を信じる人と信じない人に派閥割れ。


信じない派の主人公とその息子、他3名は、あれやこれやの末に命からがら車で脱出します。


主人公は徹頭徹尾自分を抑え、パニックを起こさず、良識的で、「良い判断」をしているように「見えます」。


通常の映画では「かくしてヒーローは地球を救った」もしくは「主人公とそれを信じたごく少数だけが奇跡的に助かった」となるでしょう。


ところが、この映画ではなりません。


ラストで霧の中から現れるのは、ラスボスかと思いきや…。


映画に出てくる巨大昆虫はこれに似ている:六本木ヒルズのオブジェ。
画像は森ビルよりお借りしました。



主人公の判断やら努力やらが一瞬にしてペシャッと無残に押しつぶされ、観る者はポカーンとする他なすすべもありません。


こういう「皮肉の利き過ぎたバッドエンド」は、短編SFに散見されるものです。


スティーブン•キングの原作小説「霧」(1980年発表)も短編(270P)です。



しかし、何と原作はバッドエンドにあらず。


フランク・ダラボン監督が映画化に当たりエンディングを大胆に変更。
原作のキングもこの「改変エンド」を高く評価したのことです。


観終わってから映画のレビューをチェックしたところ、日本での評価は「胸糞映画」「鬱映画」で決着しているようですね。


しかしリアルさで言えばこの上なく非常にリアルなんです、このバッドエンドの方。


「かくしてヒーローは地球を救った」や「主人公と少数の仲間だけが奇跡的に助かった」は、あり得ないからカタルシス(心の澱が流されることにより気分が晴れること)になる。


バッドエンドは「現実ならこうなる可能性の方が高いだろう」と身につまされるから、より澱が増える。



こういう「ラストのオチが全てを覆す」ような映画はこれ以上書けません。


今Amazonプライムビデオ会員無料になっているので、気になった方はまずご覧ください。


ただ、本当にバッドエンドなのでメンタルが弱まっている方にはお勧めしません。


スティーブン・キング画像はMoviewalkerよりお借りしました。



※題の紛らわしい「ザ・ミスト」(ダニエル・ロビィ監督/仏・加/2018年公開)とは別物です。