雑学>日本の奇習・お歯黒とは❓
能面のお多福の口の中が黒いのは「お歯黒」を表しています。
また雛人形の口も、小さすぎて目立たないのですが、一部の物はよくよく見ると黒かったりします。
イマドキの新しい雛人形は白い歯が多いようですが。
実はお歯黒の風習は日本だけでなく中国や東南アジアの一部の少数民族に見られたようです。
しかし一番人口の多かった日本がやはり目立ったようです。
特に幕末に来日した西洋人が滅茶苦茶ギョッとしたようです。
そしてめでたく「世界3大奇習の一つ」に仲間入り。
世界三大奇習
- 中国の纏足
- 欧米のコルセット
- 日本のお歯黒
纏足とコルセットはこちらの記事に書いています。
さてこのお歯黒は、鉄を酢や酒などに浸して作った黒い酸化液体と植物タンニン(柿渋など)の混合液体を使って歯を染めます。
鉄が酸化したものですから、平たく言うと鉄錆(さび)ですね。
日本には弥生時代まで鉄がなく(そのため武器も青銅製だった)、鉄は古墳時代に中国大陸からもたらされます。
この鉄の伝来時に、お歯黒も大陸から伝わってきたと見られています。
古墳から出土した人骨の中にお歯黒の痕跡が認められるものがあります。
平安時代頃までは上流階級の習慣で貴族男性も行っていました。
戦国時代には、いわゆる戦国武将の中にもお歯黒をする人がいたそうです。
しかし江戸時代以降は既婚女性限定の習慣となります。
江戸時代には庶民階級まで広がり、だいたい明治時代まで行われていました。
明治政府は明治3年にチョンマゲ禁止令と同時に華族にお歯黒禁止令を出しています。
しかし庶民にまでは及びませんでした。
Wikipediaによると、東北地方の一部地域などでは昭和(戦前)までお歯黒が残っていた所もあったようです。
👇江戸時代のお歯黒道具一式。
当時の嫁入り道具の必需品だったそうです。
歯科衛生が発達していなかった時代には、歯を黒く塗ることで歯並びの悪さや歯の変色を隠す目的がありました。
また、鉄錆を塗ることでミュータンス菌(虫歯菌)の繁殖を抑える効果は確かにあったそうです。
歯の健康に一定度役立っていた点では、纒足やコルセットに比べまだマシ感はあります。
既婚女性は既婚の証として眉毛を剃り落とし、お歯黒を施すのがたしなみとされました。
そしてその眉を剃り落とした真っ黒な口の女性が、当時の美的感覚では
「最高に美しく、セクシーで魅力的」
とされました。
👇映画「駆け込み女と駆け出し男」で当時に忠実なメイクをした満島ひかりさん。
👇映画「清洲会議」で(以下同)の剛力彩芽さん。
眉を剃り落とすと、表情が読み取りにくくなります。
怒って眉を吊り上げた女性よりも、もし仮に怒っていても表情に変化のない眉なし女性の方が優しげに見えて「女らしい」、ひいては「美しい」とされたのです。
また、今では恐ろしげに見える黒い口元も、当時は白い歯よりも「表情が柔和になる」と考えられたそうです。
日本人全員が、100%本気でそう思っていたのです。
健康問題はさておき、美意識という観点からは纏足を大声で非難しにくくなってきました。
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