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ドラマレビュー>「家電侍」<後編>面白さの秘密&江戸時代のリアル事情


<昨日はブログが重かったせいかアクセスが少なかったため、再公開します>



前編/中編はこちらです。




私の嫌いな台詞のひとつ「昔はよかった」。


こう言う人の昔というのは、昭和の高度成長期頃(公害がMAXの頃)とか、バブル時代だったりします。


人生の絶頂期を過ぎた者が己の絶頂期を懐かしんでいるもので、その時代が万人にとって客観的に良かったのかどうかは二の次です。


同様の台詞に「これだから今どきの若者は~」があります。


画像はデザインTシャツ販売のClubT通販サイトより。


それとはまた別に、ここ数年?十数年?「江戸時代はこんなに良い時代だった」という江戸時代アゲアゲの出版物やネット記事をよく目にします。


「江戸の町は諸外国に比べてもこんなに清潔だった」
「江戸時代の識字率は世界トップクラスで欧州なんかよりはるかに高かった」


またエコロジーブームに乗って


「江戸時代は今よりも遥かに環境に優しい循環型社会だった」
「江戸時代はこんなにエコでサスティナブルでSDGsだった」
「とにかく江戸時代に学べ!!」


みたいな。


・・・そうですか?


江戸時代は生後1年間の乳幼児死亡率が20~25%にも上ったんですよ。
そもそもお産自体が危険なことだったため出産時の死亡率が10%りました。
(この点も本ドラマ中に解説があります)


生きて生まれた子の4人から5人に1人は生後1年以内に死亡。


そこを生き延びても、成人(江戸時代の成人はだいたい14歳から16歳くらい)できる子どもは50%ほどだったと言われます。


日本史きっての子沢山、徳川家斉は53人も子供を作りました。
内訳は男児26人/女児27人です。
しかし成人できたのは53人中28人に過ぎません。


将軍家ですから衛生状態や栄養状態、医療事情など庶民よりずいぶん良かったはずですが、それでも成人率は52.8%。


無事成人して15歳で第13代加賀藩主前田斉泰の正室に嫁いだ21女(女児27人中の21番目)溶姫(ようひめ)を迎えるために前田家が造ったのが、今も東大本郷キャンパスに残る赤門です。


☟東大赤門画像はアーバンライフメトロより。


それに加えて男尊女卑の風潮。


江戸時代、女性の地位は室町時代やその前の平安時代(女児も親の遺産を相続して婿を取る)よりはっきりと低下しています。


さてこの「家電侍」では、主人公の四十郎が失職して浪人になり、暇ができたことで妻の家事労働がいかに大変かを目の当たりにします。


もともと愛妻家だった四十郎。
少しでも妻に楽をさせたいとタブレットに相談。
その都度出現する家電で妻は大助かり、家庭は円満になっていきます。


例えば第1話の炊飯器の回では、こんな江戸事情が披露されます。


この時代の飯炊きは重労働。
朝暗いうちから起きて、竈で薪を使って飯を炊く。
そのためだけに江戸時代の主婦は年間700時間も費やしていた。


☟かまど画像はWikipediaより。


つまり一日当たり2時間。


続く洗濯機の回では、毎日の洗濯にも同じくらいの時間が費やされていたと説明されます。
飯炊きと洗濯だけで1日4時間。


そこに降って現れた保温機能付き電気炊飯器。


ああ、まるで夢のよう。


次々に出現する家電に、右往左往しながらも喜ぶ主人公一家。
同時に主人公は、妻の家事労働がいかに大変だったかということにも気づきます。


それまでは「美しい、従順だ、夫を立てる」といった表面的なことばかり(もしくは自分に都合の良いことばかり)を評価していた妻の、真の偉大さを初めて思い知ります。


日本初にして世界初の電気炊飯器を開発したのは東芝です。
1955(昭和30)年に発売されました。


その時は会社内部からも「女性を堕落させる」といった反発の声が大きく、開発者はこんなことも言われたそうです。


「君は、飯すら機械に炊かせようなんていう怠け者の女を嫁にしたいと思うか?」


つまり、女に楽をさせたらそんな女は誰にも嫁にもらってもらえなくなり、結局は女性自身の損になるんだぞという、いかにももっともらしい風を装った嫌らしいロジックです。


77年前の発言ですから発言者は高確率で既に鬼籍に入ってらっしゃるでしょうが。


このドラマは、そんな便利な家電を当たり前と思っている現代人に家電のありがたみを再度問いかけます。


それと兼梨夫婦の繰り広げるヒューマンドラマ。


ベタなんですけど、臆面もない真っすぐなベタさがイマドキかえって新鮮で、少々ひねくれもののエンドウ(仮名)ですら好感を持ちます。



☟兼梨夫妻を演じたのは滝藤賢一さんと前田亜季さん。


あんまりネタばらししても何なので、記事に書くのはこの辺までにしときます。


皆さまもよろしかったらご自身の目でお確かめください。


全13話を最後まで見ると、なぜ家電が江戸時代に転送されてくるのかというあたりも描かれています。


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