潜水艦の潜水能力と「火事場の馬鹿力」
「火事場の馬鹿力」
「火事場の馬鹿力」という日本語があります。
「火事の時には普段は出せない大きな力が出て重い物を持ち上げたりできることがある」というものです。
日常生活において、人間の筋肉は本来の20%~30%の力しか出させないようにコントロールされています。
コントロールしているのは脳です。
脳の安全装置(リミッター)が無意識のうちに出力をセーブするようにできている。
なぜかというと、100%の力を出すと壊れるから。
骨は折れて砕け、筋肉は断裂して腱はちぎれます。
人間の歯もエナメル質の強度から言えば石を嚙み砕けるらしいですが、その瞬間噛んだ方の歯も、顎の骨も砕け散ります。
相打ち。
100%の力を出すということは「死なばもろとも」を意味するのです。
自分で意識して出せる力の上限は、重量挙げの選手のように訓練をしても、どう頑張っても70~80%がMAXだそうです。
残りは遊び、安全マージンです。
ところが生きるか死ぬかという極限状況に置かれると、骨や筋肉を犠牲にしてでも何が何でも生き残れ!ということで脳のリミッターが解除されます。
副腎髄質からアドレナリンが大量に放出され、90%以上の力が瞬間的に出せてしまうことがある。
しかし命だけは助かっても身体はズタズタになる可能性も高い。
というわけで、人体もたっぷり遊びを残して余裕をもって使うのが良いのです。
しんかい6500の潜水能力は実は10,050m(33,000フィート)
日本の調査潜水艇「しんかい6500」は「6,500mまで潜水可能だから6500と名付けられた」ことになっています。
しかし、実際は10,050mまで潜水可能な耐圧設計だそうです。
最初、1万50て半端だなあ?と思いました。
が、あっと気づきました。
3万3千フィートがだいたい1万50メートルでした。
なるほど。
10,050mの水圧は1,005気圧です。
(水深10mごとに1気圧増える)
1千気圧ってどのくらい?と思ったら、なんとお煎餅やお餅で有名な越後製菓の公式サイトにこんな秀逸な例えが載っていました。
1,000㎏(1ton)の重りが上下左右、360°の方向から小指の爪に置かれている状態
えぐい。めちゃくちゃえぐい。
もっと詳しいことが知りたい方はどうぞ。
☟
高橋英樹のCMで有名なあそこです。
越後製菓CM 2017年 一番まる餅「連打」篇
人も機械も余裕が大切
「1,000気圧にまで耐える設計だけど、用心して6,500気圧までしか潜水しません」というのがしんかい6500の運営姿勢なのです。
それゆえに1989年の製造から現在まで1,500回以上潜水しながらいまだ現役で稼働できてるんです。
34年で1,500回は1年に44回。
365÷44=8.3日に1回は潜ってる計算になります。
意外と多かった。
タイタン号の潜水能力は実は1,300m?
一方、4,000mまで潜水可能と公表してツアー客を募集していたタイタン号。
一部の報道では、構造上の不備から実際の潜水能力は1,300m程度だったという話が出ています。
過去に上部にその点を指摘したオーシャンゲート社の従業員(技術者)が解雇されたとか。
安全マージンどころか、シークレットシューズを履かされていた・・・?
1,300が真実かどうかはまだ今後の報道が待たれますが、ひとつ言えることは「無理は禁物」だと思います。
よく、自分にも他人にも「まだまだできるはずだ」「100%の力を出し切れ!」「限界を越えろ」等々勇ましいことを言う人がいます。
私は今までもこれからも「死にたくないから無理」と答えるつもりです。
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