マンガ書評>㉕「楽園タクシー配車日報」たむらあやこ:難病漫画家では終わらない❗️
ナンバリング&再公開です。
初公開:2021/11/10 22:00
以前ご紹介しました、たむらあやこさん。
40代。
画像は47Newsから。
函館で准看護婦として忙しく働いていた最中、2002年に22歳の若さで
国指定難病「ギラン・バレー症候群」を発症。
2年間の寝たきり生活の後も後遺症で手足の感覚は戻らず、車椅子生活。
もともと絵が好きだったことから、リハビリとしてマンガを描き始めます。
2014年に、自信の10年にわたる壮絶な闘病生活を赤裸々に、しかしユーモアを交えて
明るく描いた
「ふんばれ、がんばれ、ギランバレー」
という作品で講談社からデビューを果たします。
- ふんばれ、がんばれ、ギランバレー! (モーニングコミックス)
- 講談社
- Digital Ebook Purchas
今日ご紹介するのは彼女が闘病記の後に描いた
「楽園タクシー配車日報」①②(全2巻)です。
楽園タクシー配車日報
データ
出版社 :講談社
種別 :モーニングKC(1・2巻完結済)
作者 :たむらあやこ
ジャンル:コメディ(タクシー業界もの)
いまだに多くの後遺症が残り、身体障害者認定を受けているたむらさん。
闘病記でデビューを果たし話題になったのですから、おそらく周りは当然のように
「闘病もの」の続きの執筆を期待したでしょうし、勧めたでしょう。
しかし彼女が描いたのはタクシー会社を舞台にしたコメディでした。
講談社モーニング公式で一部無料試し読みができます。
他の話も気になった方はぜひどうぞ。
- 楽園タクシー配車日報(1) (モーニングコミックス)
- 講談社
- Digital Ebook Purchas
- 楽園タクシー配車日報(2) (モーニングコミックス)
- 講談社
- Digital Ebook Purchas
手の感覚がない、手に力が入らない、という状態で書かれているので
「ギランバレー」は本当に描線がグニャグニャでヘロヘロで枠線すら歪んでました。
それが本作からはデジタル作画(液晶タブレット)を導入されたとのことで、
見違えるほど描線が綺麗になってます。
一度でも紙にペン(漫画家が使うつけペン)で絵を描いたことある方はご存知でしょう。
ペンと紙の摩擦、紙の引っ掛かりにより、強い筆圧が要求されます。
※漫画家の職業病は腱鞘炎(と腰痛)です。
しかしツルツルのタブレット画面だと、手の負担がすごく軽減されるのです。
出典元:クリップスタジオ
ストーリー
中小というよりは零細規模のタクシー会社の日常の悲喜こもごもです。
若い運転手は・・・一人はいますが一番のサボり魔です😅
あとは見事に中高年というか、アラゼン(アラウンド前期高齢者)ばかり。
たむらさんはお父上が本職のタクシー運転手ということで、エピソードにリアリティがあります。
一応人情ものコメディですが、安易にありがちな正義感ガチガチの人情話には流れません。
ひと癖もふた癖もある人ばかり出てきて、珍獣大集合といった風からの、まさかのホロリ展開❗️その辺りの匙加減が絶妙です。
作者・たむらあやこさん
文章でもマンガでも、読んでいると
「ああ、この作者さんは絶対、めちゃくちゃ、性格のいい人だ」
というのがしみじみわかる人がいます。
もうね、コマとコマの間に人柄が滲み出てるんですよ。
逆も恐ろしいほどわかりますけどね😅
このたむらあやこさんは、私の知る限りの女性漫画家ではトップクラスの性格美人です。
性格が良くても作品がつまらなければ漫画家としてはどうしようもないんですが、
ちゃんと面白い。
もちろんワンピースとか巨人とか鬼滅のように万人ウケはしてません。
この「楽園タクシー配車日報」も2巻打ち切りになったようです。
その後のたむらさんの本は角川書店から出てますので、講談社とは方針が合わなかったのかもしれません。
それでも、今もなお感覚の戻らない(医師には一生このままと宣告されている)手で
ちゃんと面白い作品を描き続ける彼女を尊敬します。
画像は函館新聞より。
左はお母様。
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