JR高円寺駅南口から徒歩5分ほど。

駅前商店街が途切れて住宅地に入ったところに佇む長崎ちゃんぽんと皿うどんの店
「唐八景」

これでも数年前に看板を新しくされていて、以前はもっと廃墟感が強かった。

中も同じ感じで廃墟一歩手前。

しかしながら味は本格的。

フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「きたなシュラン＆きたなトラン」（2009年12月から2016年7月まで続いた企画）の第2回日放映（2009年2月10日）で紹介された「見た目は汚く味は絶品」系の店です。

長崎出身の店主のおじいちゃんが一人で切り盛り。
メニューは恐ろしいほど数が少なく、そして本場長崎の味でした。

長崎ちゃんぽんといえば九州以外の方にはまず「リンガーハット」でしょう。
あそこも本社は長崎です。

しかしファミレスとして全国展開するにあたり、色々とアレンジしています。
実は正統派長崎ちゃんぽんではありません。

例えばスープを鶏ガラと豚骨のブレンドにして、九州以外の人にがっつり「九州感」をアピールするといった点です。

実は正統派の長崎ちゃんぽんは豚骨は使いません。
鶏ガラを強火で煮出して白濁させるだけなんです。

また、地元長崎や隣の佐賀（私の出生地）ではむしろ主流の太麺皿うどん（ちゃんぽんめんを炒めてところどころカリッとさせたものをさらに野菜と炒め合わせる）も本場ものとはだいぶ違います。

それでも東京では「本場長崎ちゃんぽん」を看板で名乗りながら皿うどんは細麺しか置いてないよ、というなんちゃってな店が多数存在する現実を考えれば、レギュラーメニューに太麺を用意してるだけでもまだかなりましなんですけどね、リンガーハット。

その点この店は本当に本場長崎の味そのままでした。

長崎市の唐人街（横浜中華街、神戸南京街と並ぶ日本三大中華街のひとつ）にある名店（観光客向け・高い）ではなく、佐世保市（実はちゃんぽん屋が長崎市より多いとか❓）にある普段使いの安いちゃんぽん屋の味。

しゃらくせえ高級素材なんか入れないし季節のアレンジなどない庶民のちゃんぽんの味。
そのまんま。

最後に行ったのは確か今年の初めでした。

その後しばらく足が遠のいたのは、カウンターだけの店でどうしても密が気になったから。

そうこうして7月ごろ久しぶりに前を通りかかったら、店が閉まってる。
特に貼紙もないけど、緊急事態宣言明けまでお休みかな。

おじいちゃんは一昨年70歳になったと言ってたから年金は出るだろうし。
休業補償も出るから無理してまで開ける必要もないでしょうし。

とその時は思ったんですよ。

そして今日。
宣言も解除されたし、皮膚科の帰り道に寄れるしと思って行ったら、ちょっと様子が変。

公共料金の請求書やらが多数引き戸に挟み込まれてる。
それで近づいて見ると客が張っていったと思われるメッセージが。
これって・・・

慌ててスマホで調べたら、店主は5月に突然お亡くなりになったようです。

5ヶ月経ってもそのまま手付かずということは店も土地も自己所有だったんでしょうね。
郵便物が放置されているというのは、親類縁者もいない方だったのでしょうか❓

数年前まではかなりご高齢の実の「お母様」が時折奥の席に座ってTVを観てらっしゃいました。
90いくつで大往生なさったとご主人から直接聞きましたが・・・。

出前に使われていた二輪も店の前に停まったままでした。

安らかにお眠りください。

唐八景とは、長崎市にある山の名前です。

山頂にある唐八景公園は、長崎市街と長崎湾を見下ろす絶景スポットです。