中国版シンデレラにエジプト版シンデレラ:世界中に多数ある「小足女性偏重伝承」
初公開:2022/05/25 12:00
シンデレラ
みなさまも良くご存知でしょう。
ガラスの靴を王子の元に残していったために王子の妃になれた、ラッキーな小足娘の話。
王子は残されたガラスの靴に足が合う娘を探しますが、ガラスの靴はとても小さくて、どの娘も足が入りません。
ただ1人、シンデレラだけがその靴を履くことができました。
👇纏足靴を思わせるほど極端に小さい「ガラスの靴」
中世の女性の標準サイズがよくわからないので、以下は現代に置き換えて書きます。
私は身長160cmで靴は22.5〜23cm。
非常に小足だと言われます。
それでも、例えば無作為に選ばれた1,000人の成人日本人女性の中で1番の小足に選ばれる自信はありません。
例えば22.5が1番の小足となった場合でも、私の他に2、3人くらいは同サイズがいるんじゃないかと思います。
「他の娘は誰一人としてとても履けなかった」
となれば、20とか、病的な足のサイズだったのではと思われます。
とにかくシンデレラがミラクル大逆転で玉の輿に乗れたのは、顔とか性格よりも、まず何よりも小足だったから。
現在世界で一番知られている「小足娘の玉の輿物語」はシャルル・ペロー(17世紀フランス)が欧州の古い伝承を集めてまとめた「ペロー童話集」の中の「サンドリヨン(灰かぶり姫)」です。
「サンドリヨン」が英語に訛って「シンデレラ」になりました。
しかし実はこの「小足ゆえに玉の輿」類型の昔話は、欧州のみならずアジアを含めた世界各地にいくつも点在していると言われます。
中でも有名なのが「中国版シンデレラ」と言われるこちら。
葉限(しょうげん/イエーシェン)
中国唐代に段 成式(ドゥァン チェンシー/803〜863年)という人物が民間伝承を選り抜いて載せた「酉陽雑俎(ヨウヤンヅァーヅ)」という本に収録された古典です。
「葉限」(イェー シェン)
継母にいじめられる葉限(葉が姓、限が名前)という娘がいました。
葉限はある日、魚の魔法(長くなるので詳細は割愛)で手に入れた金の靴を片方外で落としてしまいます。
それを拾った男は、靴を王に献上します。
王は靴のあまりの小ささに驚き、靴が履ける娘を探させます。
国中の女性がその靴を履こうとしますが、小さすぎて誰一人履けません。
ただ一人履けた葉限は、王の第一妃に取り上げられました。
中国の奇習、人体改造で小足を作る「纏足」が広まったのは12〜13世紀頃。
始まったのは10世紀頃と言われます。
それ以前からも「小足は美しい」という価値観が強くあったからこそ、強引な人体改造を始めるようになったのでしょう。
つまり9世紀に「酉陽雑俎」が書かれた頃には、既に「小足こそ女性の価値」という美意識は確立していたと思われます。
そして「葉限」の元になった民間伝承は、中国南部(昔はタイ族などが住んでいた東南アジア。のちに中国の領土拡大で中国に組み込まれた)地域の物語である可能性が高いそうです。
またWikipediaによると、現在わかっている限り世界最古と思われるシンデレラ類型話は、ギリシャの歴史家ストラボンが紀元前1世紀に記録したこちらだそうでぅ。
「ロードピス(Rhodopis)」
「ロードピス」
外国からエジプトの金持ちの屋敷に連れてこられた女奴隷ロードピスは、肌の色が違うために他の女召使いたちからいじめられていました。
ある日ファラオ(王)が祭りを開き、召使い達も外出が許されます。
ロードピスも外出しますが、サンダルの片方を隼に持ち去られてしまいます。
隼が落としたサンダルを手に入れたファラオは、ホルス神(隼はホルス神の化身と見なされていた)のお告げと思い、このサンダルの持ち主の娘を妃にすると宣言します。
サンダルは普通の娘達には小さ過ぎ、それを履けたのはロードピスだけでした。
王は(奴隷の)ロードピスを妃にしました。
「女性は小足の方が美しい」「顔の造作よりも足の小ささ」という価値観は、なんと紀元前から。
中国だけが極端に暴走した(纒足=人体改造)ため今では中国の専売特許の価値観のように認識されていますが、そうではありませんでした。
私も中世に生まれていればこの小足で玉の輿に乗れたでしょうか?
それとも、22.5cm程度では当時は小足とは言われなかったのでしょうか?
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